Q. 成功確率が低い中で
「このまま続けてキャリアは大丈夫か」と
不安に思う担当者も少なくありません。
新規事業に挑戦し続けることの価値や、
経験がどのように活きるのか教えてください。
✔︎ 新規事業経験者は、組織の未来を通訳する存在になれる
✔︎ 経営人材に必要な“意思決定の筋力”が鍛えられる
✔︎ 失敗経験が語れる人こそ、転職市場で最も価値ある人材になる
新規事業経験者は、組織にとっての“未来通訳者”になる
顧客が言葉にできない違和感。まだ存在しない市場構造。仮説と実験だけが武器の意思決定──。新規事業の現場は、常に“未来の空気”にさらされている。そうした現場での経験は、既存組織に戻っても決して無駄にはならない。むしろ、未来と現在のギャップを翻訳する「通訳者」として、組織のなかで極めて重要な存在になる。
経営と現場、マーケットとプロダクト、技術と顧客。これら異なる言語を話すステークホルダーの間をつなぎ、未来に向けての橋渡しを行う──それができるのは、新規事業の“ジレンマ”“混沌”をくぐった人材だけだ。
「この技術は、顧客にとって何の価値があるのか?」「このアイデアは、事業部にどう受け入れられるか?」「このデータは、経営の意思決定に何をもたらすか?」。そうした“翻訳思考”こそが、組織の次の成長を加速させる。
挑戦経験は、“経営人材”を育てる唯一の土壌になる
大企業の中で、既存事業でOJTを繰り返すだけでは「経営人材」は育たない。そこで得られるのはある意味では“守りのスキル”だ。一方で、経営人材に求められるのは「ジレンマに満ちた意思決定」という“攻めの筋力”であり、それはまさに新規事業の現場でこそ鍛えられる。
売上のない中で、どこに人を配置するのか。成果が見えない中で、撤退判断をいつ下すか。リソースも応援も限られる中で、社内外のステークホルダーをどう巻き込むか──。それらはすべて、“経営そのもの”の問いである。
だからこそ、本気で経営人材を育てたいなら、新規事業に放り込むべきなのだ。成功したかどうかは関係ない。重要なのは、失敗や苦悩を経て「仮説思考」「逆算設計」「構造的な問題定義」といった視座を手に入れたかどうかである。
“語れる失敗”がある人は、転職市場で最も強い
「失敗したらキャリアに傷がつくのではないか?」──その不安は理解できる。だが実は、転職市場では“誇れる成功”よりも、“語れる失敗”の方が圧倒的に強い。
何が起きたか。それをどう解釈し、どんな教訓を得たか。そして、それを次にどう活かせるか。こうした“構造的思考”で経験を言語化できる人材は、どの企業からも求められる。特にスタートアップでは、大企業出身者で新規事業を経験した人材に強いニーズがある。
失敗には意味があるのではない。失敗に意味を与えられるかどうかが、キャリアの価値を決めるのだ。経験を抽象化し、概念化し、構造化して語れる──それができる人材こそ、“経験を転用できる人”として高く評価される。
失敗の中に、未来を動かす力がある
新規事業の挑戦は、確かに報われにくい。成功する確率は低く、周囲の理解も得づらい。だが、そこで得た経験は確実に“未来を読む力”を育てる。たとえ事業としてはうまくいかなくても、その過程で得た構造化思考や共感力、ジレンマの中での意思決定力は、次のチャレンジやキャリアにおいて必ず活きる。
たとえプロジェクトが失敗に終わっても、それはキャリアの終わりではなく、「未来への始まり」なのだ。失敗を通してしか見えない風景がある。そこに気づける人こそが、組織や社会の未来をつくっていく。
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