Q. 既存事業の業界とは
まったく関係のない新しい領域へ
進出することになりました。
0から1をどう生み出せばいいのか分かりません。
具体的なステップや実例があれば知りたいです。
✔︎ 最初にやるべきは、「知る」ではなく「飛び込む」
✔︎ 違和感・構造・インサイトの3点から仮説を立てる
✔︎ 最初のアクションは、課題発見より「問いを立てる」こと
知る前に、現場に飛び込め
異業界に挑む際、「まずは業界研究から始めよう」と情報収集ばかりに時間を割いてしまう人は多い。しかしネット記事や二次情報では、本質的な構造や違和感には辿り着けない。必要なのは、頭ではなく身体を使ったリサーチだ。
展示会に出向く。業界関係者と直接会って話す。競合サービスを実際に利用してみる。顧客として問い合わせをしてみる。つまり、現場の空気に直接触れ、体感すること。それによって初めて、その業界の“当たり前”に対して違和感を持てるようになる。
この違和感が、ゼロイチの起点となる。自分が属していた業界では見えなかった「問い」を生むためには、他者の世界に飛び込む以外に方法はない。
その業界の「構造」を言語化せよ
どんな業界にも、「勝ちパターン」と「暗黙の前提」がある。価格の付き方、決裁の流れ、カスタマージャーニー、商習慣、そして誰が我慢して動いているのか──そういった構造を“図解”できるまで分解しなければならない。
特定のプレイヤーがなぜ儲けているのか。その構造的優位性は何か。ユーザーがどこで不満を感じていて、どこで“諦めている”のか。それらを構造として言語化できるようになると、初めて「どこに打ち手があるか」が見えてくる。
構造の解像度が低いままアイデアを考えても、それはただの机上の空論にしかならない。
先に“ビジネスモデル”は考えなくていい
異業界参入時にありがちな誤りが、「どんなモデルで儲けるか?」を最初に決めてしまうことだ。だが、最初にモデルを設計すると、仮説探索の範囲が限定され、事業としての可能性を狭めてしまう。
初期フェーズでは、「どんな価値のやりとりが発生しているか?」「誰が何にお金を払っているのか?」を観察し、その中に“非効率”や“歪み”を見出すことが優先だ。モデルはその後、ユーザーの実際の行動や反応に基づいて構築するものであり、事前に決め打ちするものではない。
違和感→構造→問い、の順で仮説を立てる
ゼロイチの起点は「課題」ではない。スタート地点はいつも“違和感”だ。「なぜこの業界ではこうなっているんだ?」「この非効率は本当に必要か?」という疑問から始まり、それを構造として整理する。そのうえで、「もしこの前提を壊したら、何が変わるか?」という問いを立てる。
この順序──違和感→構造→問い──を踏むことで、表層的な改善案ではなく、“構造を揺るがすアイデア”が生まれてくる。問いを立てるとは、「見えていない前提にメスを入れる」ことであり、それがゼロイチの本質である。
ある住設メーカーは、まったく畑違いの介護業界に参入するにあたり、介護施設に通い詰め、入浴支援の現場にボランティアとして関わった。すると、設備よりも“人の負担”がボトルネックになっていることに気づいた。
そこから彼らは、「空間設計そのものを変えなければ意味がない」という問いを立て、自社の設計ノウハウを活かして“介護動線設計BPO”という新サービスを立ち上げた。これは今や、行政との共創プロジェクトにも発展している。
このように、違和感を起点に構造を捉え、問いを立てる──というプロセスこそが、異業界でゼロから新しい価値を生む唯一の道筋となる。
異業界参入ステップ
①現場に飛び込む
体験を通して違和感を発見する
②業界構造を言語化する
誰が何に悩み、どう回っているのかを可視化
③問いを立てる
前提や仕組みに対する根本的な疑問を言語化
④仮説をつくる
構造的なズレを是正する解決策を設計
⑤行動して検証する
プロトタイプやインタビューで実際の反応を確かめる
⑥スケーラビリティを見極める
構造の中で横展開できる領域を探る
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