Q. 「このCxOの役割が自分に向いている」と
思っていたとしても、チームの他メンバーが
「あなたはこのCxOの方が向いている」と
異なる評価をしてくれた場合、
その外部評価に従う方が良いのでしょうか?
✔︎ 自己認識と他者評価のズレは、チームビルディングにおいて貴重なフィードバック機会である
✔︎ 他者の評価は“客観性”の補完。だが“適性の最終決定”ではない
✔︎ 最適なのは、自己認識と他者視点の“重なり”を深掘りし続ける姿勢である
期待役割の自己認識と他者評価のズレは“ギフト”である
まず大前提として、自分が担いたいと感じているCxOの期待役割と、他者から「あなたはこれが向いている」と評価された役割がズレていた場合、それはネガティブに捉える必要はまったくない。むしろ、そこには“自分では気づけない魅力”が映し出されている可能性がある。
CxOの役割設計においては「自己理解」だけでなく「他者評価」が極めて重要である。なぜなら、事業というのは常にチームプレイであり、自分の振る舞いや強みは“他者からどう見えているか”によってこそ、価値を持つからだ 。
この“ズレ”は、自分という人材の新しい可能性を発見する「ギフト」だと受け止めたい。
「他者評価=真実」ではない。だが、軽視すべきではない
一方で、他者からの評価が必ずしも“適性の真実”とは限らない点も強調しておきたい。他者はあなたの限られた時間・振る舞い・関係性から判断しているため、あなたの「情熱の源泉」や「長期的成長ポテンシャル」までは見えていない可能性がある。
とはいえ、だからといって他者評価を軽視するのは危険だ。なぜなら、自分の認識は時として“理想”や“プライド”に引きずられるため、「現実の振る舞い」とズレが生じやすいからだ。
大切なのは、他者が評価してくれた役割に対して「なぜそう見えたのか?」を丁寧に深掘り、そこに自分の“無自覚の強み”や“自然体の貢献性”が隠れていないかを探ることである。
ベストは“自己認識 × 他者視点”の重なりを探る対話
最適な判断は、自分のやりたいこと・得意なことと、他者から見た強み・期待の重なりを探るプロセスにある。このプロセスを可能にするのが「対話」であり、グループ内での相互フィードバックの文化が重要になってくる。
たとえば、自分が「自分はCPO(プロダクト責任者)を担いたい」と考えている一方で、周囲が「あなたはCOO(実行責任者)の方が向いている」と思っている場合、その認識のギャップについて「なぜそう見えたのか?」「自分はなぜそう思うのか?」を互いに語り合ってみてほしい。
この対話を通じて初めて、“真にフィットする役割”が見えてくることが多い。逆に、どちらか一方の視点に一方的に寄ると、後々の軋轢や機能不全につながる。
自己認識を更新し続けるのがCxOの責任である
実際の現場で担うCxOの役割とは、“肩書き”ではなく“期待される貢献”のことだ。したがって、その適性や振る舞いはプロジェクトフェーズやチーム構成、メンバーの成熟度によって変化し続ける。
この動的な役割変化に対応するには、常に自己認識を更新し続ける姿勢が不可欠だ。その更新にあたっては、他者からの評価や違和感、フィードバックこそが最大の材料となる。
一度決めた役割に固執するのではなく、「今のチームと今の自分にとって、最も価値を発揮できる立ち位置はどこか?」を定期的に見直すこと。それが、強いCxOチームの条件である。
「ズレ」は混乱ではなく、進化の兆しである
最後に強調したいのは、「ズレ」は決して混乱や失敗の兆しではないということ。むしろ、それは“役割の明確化”に向けた最初のステップであり、自己認識を再構築するチャンスである。
“自分に向いている”と思う役割も、“他人から向いている”と思われた役割も、すべては仮説にすぎない。だからこそ、フィードバックを仮説検証の材料として捉え、“役割のアップデート”を続けるマインドが、CxOとしての真の成長につながっていく。
ズレがあるなら、喜ぼう。そのズレの中にこそ、あなたが周りから期待されている“次の成長軸”があるのだから。
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