Q. チームメンバーや経営層と、
マインドが噛み合わずにすれ違うことがあります。
価値観や温度感を揃えるには、
何が一番効果的ですか?
✔︎ マインドの不一致は、目的と信頼の“不明瞭さ”から生まれる
✔︎ まず“なぜやるのか”を共有し、言語と情熱で深度を揃える
✔︎ 価値観はすり合わせるのではなく、“共鳴”させるもの
“温度差”の正体は、目的の“解像度差”である
「なんか温度差あるな」と感じたとき、それは“やる気”や“能力”の差ではない。たいていの場合、それは「なぜこの事業をやるのか」が互いに見えていない状態から生じている。
起案者は「顧客に価値を届けたい」と思っていても、他のメンバーは「会社から降りてきた仕事」として捉えているかもしれない。経営者は「未来の柱事業になり得るか」で判断しているかもしれない。
それぞれの立場で“正しさ”が違う。だからこそ、最初にすべきは「目的の言語化」だ。なぜ今このテーマに取り組むのか? どんな未来を見ているのか? この問いを共有し、言語とビジョンで“共通の解像度”をつくることが出発点になる。
ビジョンとパーパスが“同期”すれば、価値観は自然と揃う
価値観のズレを無理に“すり合わせ”る必要はない。それよりも、「どんな未来を作りたいのか」というビジョンと、「何のために存在するのか」というパーパスが共有されていれば、自然と感情のベクトルは揃っていく。
人は、指示や計画で動くのではなく、「意味」で動く。「この未来を実現したい」という想いに、共感できるかどうか。それが一致すれば、細かな価値観の差異など問題にならない。むしろ多様性が力になる。
つまり、マインドセットを揃える鍵は、「正しさ」のすり合わせではなく、「情熱の源泉」の共有にある。そこに本物の一体感が宿る。
共有すべきは“答え”ではなく“問い”である
マインドを一致させるうえで最も効果的なのは、「問いを共有すること」だ。「このプロダクトの価格はいくらが妥当か?」という答えを出すのではなく、「そもそも、これは誰にとって価値があるのか?」という問いを一緒に抱える。
問いが共有されていれば、解決に向かうプロセスがチームの共通体験になる。役職や立場を超えて「同じ山を登っている」感覚が芽生え、それが信頼へと変わっていく。
マインドのズレは、“議論の結果”ではなく、“議論の起点”を揃えることでしか埋まらない。つまり「問いの揃え方」こそが、チームを一つにする鍵になる。
スモールゴールで「手応え」を揃える
言語化と共感だけでは、どうしても抽象的になりすぎる。だからこそ、小さくていいから“勝ち”をつくる。PoCで得られたリアルな顧客の反応、小規模なユーザーテストの成功、ミーティングでの手応え──そうした“小さな成功”を、意図的に設計する。
この“手応えの共有”が、チームのマインドを現実に根ざしたものへと引き寄せる。ビジョンが浮つかず、現場も離れず、その中間で具体と情熱がつながっていく。
マインドを一致させるとは、「感情」と「現実」の両輪を動かすことなのだ。
共鳴は“努力”ではなく、“設計”で起こす
「メンバーと価値観が違って困っている」と悩む前に、仕組みを見直してほしい。目的の言語化、ビジョンの共有、問いの設計、小さな成功体験──これらを仕掛けとして組み込めば、マインドの一致は“自然現象”のように起きる。
無理に合わせようとしなくていい。意志と構造を設計すれば、共鳴は後からついてくる。
大切なのは、意図と構造で“共通の熱源”を育てること。それこそが、チームのマインドを一致させる、最短にして最強の方法である。
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