みなさん、イノベーションと聞くと何を思いつきますか?
スマートフォン、Drone、VR、自動運転、AI、ブロックチェーン、メタバース…。昨今さまざまなイノベーションが世界を席巻しています。
それらを思い浮かべた上で「イノベーションとは?」という質問をすると「イノベーションとは技術革新によって世の中になかったものをうみだすこと」という答えに辿り着くでしょう。
しかし、元々のイノベーションの定義は違います。
イノベーションとは、物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」 (を創造する行為)のこと
まず、イノベーションは「技術革新」によって起きるものという定義がされていません。また次に「0→1」という定義もされていないのです。
そもそもこの世界に「0→1」で作られたものは存在しません。人類は親から、祖先から、先人たちから受け継いだ叡智に、自分たちの世代の叡智を積み重ねて、次の世代へ渡していくことで発展・繁栄してきました。
つまり先人の叡智を活かして未来を切り拓くのがイノベーションであって、「0→1」はゼロから物事をうみだすことではなく、世の中に存在するものの「新しい価値を編集する」ことなのです。
例えば、テレビと録画機の関係。テレビが初めて登場した時代において、録画機能はありませんでしたから、時間になったらテレビの前に座ってみることが必要不可欠でした。しかしその時間に仕事があり、テレビの前にいなければ、見たい番組が見れない。
そこでVHSの録画機が登場します。その後DVD、ブルーレイ、ハードディスクと媒体は進化していきますが、常に録画機は「みたい番組をみたい時にみるために録画する」という機能を追求してきました。
一方で、ハードディスクレコーダーの時代になると「録画する」という機能性を徹底的に追求するようになりました。10TBという録画容量であったり、全局録画やキーワード録画であったり。しかし、根本的に顧客が求めている価値は「みたい番組をみたい時にみる」ことから変化はしませんでした。
そこで登場したのが「オンライン配信サービス」です。もちろん登場した当初はネットの回線も遅く、権利処理もできていないためコンテンツ数は少なく、誰もそれが大きく成長するなんて見込んでいませんでした。
しかし、ネットの回線速度が技術革新によって改善され(今ではスマホで映画1本みることは雑作もない)、権利処理がクリアになってコンテンツ数が増加した結果「みたい番組をみたい時にみる」というUXが顧客の求める水準に引き上がった瞬間に、ディスラプトが起き始めました。
今ではテレビや録画機を保有していない家庭が徐々に増えてきています。
つまりイノベーションとは、技術革新は必要不可欠ではないのです。もちろん技術革新がイノベーションを促進する側面はありますが、イノベーションそのものにとって重要で不可欠なのは技術革新ではありません。
イノベーションとは「現在の当たり前を否定し、未来の当たり前を創造する」ことなのです。
顧客が求めている本質的な価値を徹底的に深掘り、そこで提供されている「現在の当たり前」に疑問を呈し、そこでUXを阻害する要因を徹底的に洗い出し、そこに別のテクノロジーや手段を持ってその阻害する要因を取り除くことで、より高いUXを実現し「未来の当たり前」へと繋げていく。
イノベーションとはまた同時に「Connecting the Dots」なのです。
世の中に存在する点と点を、実現したい目的(ビジョンやUX)によって繋いでいく。それが今までにない視点によって繋がれた時にはじめてイノベーションへと導かれていきます。
イノベーションとは、0→1で尖ったアイデアを絞り出すことでも、テクノロジーによって為されるものでも、ぶっとんだ偉人にしかできないものでもありません。
常識、普通、当たり前といわれていることに疑問を呈し、そこにある不満、不安、不条理、不合理などに徹底的に向き合う。それらを常識外の手段によって解決する方法を編み出すことが、イノベーションなのです。