PoCやMVPの検証って、何をどう見極めるべきか?

【新規事業一問一答】PoCやMVPの検証って、何をどう見極めるべきか?

Q. PoC、およびMVPなどで
何を検証したらよいのか。
検証結果について
新規事業開始(製品化・サービス化)の
判断者が納得して、
新規事業を開始できるようにするポイントを知りたい。

✔︎ モヤモヤは、未来のあなたから届いた“行動開始のサイン”
✔︎ 志望動機の完成度より、「心が動いている」ことが最大のエンジンになる
✔︎ 新規事業は、理屈より執念。火を絶やさず燃やし続けられるかが問われる


検証すべき「4つのProof」を理解せよ

PoC、MVPという言葉は使い手によって意味合いがズレがちである。コンサルや書籍での表記も揺れているため、一般的に固定化された定義がないと考えるべき状況にある。ゆえにまず、フェーズの議論を社内でするのであれば、フェーズを「何を検証する段階か」で定義し直すことが求められる。

PoC(Proof of Concept)は、「顧客が存在するか」「コンセプトに受容性があると確信できる顧客の行動があるか」「潜在的ニーズが確かにあるか」を確認する。

PoI(Proof of Idea)では、コンセプトを具体に落とし込んだアイデアに対して「欲しい」と感じてくれる人がいるかを確認する。

PoP(Proof of Product)では、そのアイデアを具現化したプロダクトが「実際に使われるか」「満足されるか」「リピートされるか」を検証する。

そしてPoB(Proof of Business)では、「お金を払ってでも使いたい」と思う顧客が存在するかを実証し、その上で事業の成長性を実証するために、「お金を払って満足してくれるか」「お金を払って使い続けたいと思ってくれるか」を検証する。

この4段階がずれていると、チーム内でも上層部との間でも誤解が起きやすくなる。特に決裁者とは、どのProof(何を検証する)かを言語化し、共通理解を持った上で進行すべきである。

判断の分岐点はPoBの通過である

新規事業を、実際に「製品化・サービス化」するか否か、「事業化」するか否かの判断軸は、PoBに到達しているかどうかである。PoBが完了していれば、「顧客が実際にお金を払った」という事実が存在する。それは単なる仮説ではなく、現実のエヴィデンスとなり、事業化の可能性がゼロではないことの証明となる。

また、それがクローズドβではなく、オープンβでの実証であるのであれば、CAC(顧客獲得コスト)、LTV(顧客生涯価値)、オペレーションコストが一定推定でき、黒字化可能な価格帯も見えてきている。

この状態まで進んでいれば、決裁者は「少なくとも損はしない」と判断できる。確実に事業がグロースすることを実証実験の段階で証明することは難しい。だが「少なくとも損はしない」ことは証明できる。PoBは「少なくとも損はしない」なら、次のフェーズへゴーの判断をすべきなのだ。

だからこそ、事業化において、PoB完了が1つの大きなハードルであり、突破すべき関門になる。

「松竹梅プラン」の梅を語れるか

決裁者が納得させるためには、もちろん壮大なビジョン(松)は必要だ。しかし、それが確実に達成できる根拠を揃えることは難しい。だからこそ、地に足のついた仮に最低限のスケールであっても確実に成立すると言える「梅プラン」が描けていることが鍵となる。

梅プランにおいては、以下の3点が最低限を揃えよう。
① 少なくとも1人以上が支払ってくれた事実
② その売価で継続的な需要が見込める仮説
③ 小規模ながら黒字化できる事業計画のシミュレーション

この3点をベースに「最悪このレベルなら再現できる」と自信を持って言い切れるストーリーを語ることで、事業投資の妥当性は訴求できる。

「撤退基準」と「最大赤字」を明示せよ

もう一つ、決裁者を納得させる重要要素が「撤退基準の明示」である。つまり、どのKPIが達成できなければ撤退するのかを定義することだ。例えば、「3ヶ月以内に有料顧客が5人に達しなければ撤退」といった具体的な数値で語る。

加えて、「マックスリスク(最大赤字)」も提示しよう。これは初期投資+初期赤字を合算した、いわば累積赤字の最大想定額だ。これによって、最大リスクを受容できるかどうかを決裁者にとっての判断材料とする。

この2つによって、損切りのタイミングと損切りのダメージを明確にすることで、「その程度ならゴー」でリスクテイクするなのか、「そんなに大きいならもう少し検証を重ねよ」なのかを、決裁者は明確に判断することができる。

「グランドデザイン」で説得力を強化せよ

最後に、事業全体の成長戦略──グランドデザインを描くことで、説得力は飛躍的に上がる。

単なる初期段階の事業計画ではなく、「中長期でどうスケールし、どのように収益化されていくか」「そのためにどの戦略で市場を攻略するか」をストーリーで語る。ここでは感情にも訴えるべきだ。決裁者の「これは面白い」「やってみたい」という内発的動機を刺激するストーリーラインを描く。

新規事業とは、理性と情熱を両立させた戦略ゲームだ。数字で裏付け、ビジョンで魅せよ。昭和流でいうならば「ロマンとそろばん」だ。それが決裁者を動かす唯一の道だ。



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ビジネスクリエイター、インキュベーター、アクセラレーター、コンサルタント。エンジニアとして、PHP/HTML/CSSのマークアップ言語によるWebサイトの制作、SEOエンジニアリング、アクセス解析アナリストを経験した後、IT領域の技術/潮流をベースとしたエスタブリッシュ企業向けのコンサルタントを経て、複数のIT企業にて、Web/アプリ系、O2O系、IPライツ系の新規事業立ち上げに注力。事業開発から経営企画業務まで、事業および会社立ち上げに関する業務を幅広く経験。また、シードフェーズのベンチャー複数社の立ち上げへの参画や経営戦略・組織戦略・PR戦略へのアドバイザリー、メンター、複数のアクセラレーションプログラムのメンターも手がける。