Q. いろいろなフレームワークがありますが、
新規事業の成功率を最も高める方法は何ですか?
✔︎ フレームワークが成功を保証することはありえない
✔︎ 成功の鍵は「問い→確信→ストーリーテリング」の三段構え
✔︎ 火種はフレームの外にある。問いに燃える人が未来を創る
成功率の高いフレームワークなんて、存在しない
「このやり方が一番成功しやすいんですか?」と聞かれるたびに、ボクは迷いなくこう答える。「そんなものは、存在しない」と。
リーンスタートアップ、デザイン思考、ジョブ理論──数え切れないフレームワークが紹介されてきたが、それ自体が事業を成功させることはない。あくまでそれらは、思考の補助線であり、行動の副産物を整理する“棚”にすぎない。
つまり、「何を使うか」よりも、「なぜやるのか」「何を見ようとしているのか」こそが事業を形にする。本質は型にはなく、問いと情熱の中に宿っている。
成功の鍵は「問い→確信→ストーリーテリング」の三段構え
僕がこれまで数十件の新規事業に並走してきたなかで、成功したチームに共通していた構造がある。それは「問い→確信→ストーリーテリング」の三段構えだ。
まず、誰よりも鋭い“問い”を持っている。社会や顧客の違和感を見逃さず、それを言語化し、解きたくてたまらない衝動に突き動かされている。そして、その問いを掘り下げ、現場に出て、自分の中に“確信”をつくっていく。
最後に、それを他者に伝える“ストーリーテリング”の力がある。「なぜこの事業をやるのか」「なぜこの未来を創りたいのか」を物語として語り、チームや経営者、顧客までもを巻き込んでいく。この三段構えこそが、あらゆるフレームワークを超えて事業を動かすエンジンになる。
フレームワークを“使いこなす”前に、“問いに燃え上がれ”
「正しい使い方」でフレームワークをなぞる人はたくさんいる。でも、新しい事業を生み出すのは、「正しさ」に燃える人ではなく、「問い」に燃える人だ。
「どうしてもこの課題を解決したい」「この未来だけは自分が創りたい」──そういう火種を内側に持っている人は、例外なく行動する。顧客と話し、プロトタイプをつくり、仮説をぶつけ、検証の壁にぶつかってはまた戻ってくる。
情熱があるから、行動する。行動するから、確信が宿る。確信があるから、人に語れる。人に語れるから、巻き込める。この循環が起きている人にとって、フレームワークは“必要なときに勝手に使い始めるもの”であり、教わって使うものではない。
フレームワークは「整理」のための道具であって、「決める」ためのものではない
フレームワークの最大の誤用は、「答えを出すために使うこと」だ。たとえば、ビジネスモデルキャンバスに一通り記入したら、事業案が完成したような気になる。しかし現実は、その枠を埋めることでは、何一つ動かない。
本来の役割は、行動の結果を“整理する”ための道具だ。何を検証したか? どんな仮説が外れたか? どこに未検証の空白があるか?──それを可視化し、次のアクションを精度高く定義するために使うものだ。
フレームに情報を入れたら事業ができる、というのは幻想だ。動いた者だけが、フレームを使う資格を得る。つまり、フレームワークは創造の出発点ではなく、検証の“再起動ボタン”なのだ。
最も成功率を高めるのは、「情熱→問い→確信→行動」の循環をつくること
では結局、何が成功率を最も高めるのか? それは、フレームワークではなく、「情熱→問い→確信→行動」の循環を自分の中に構築することだ。
その循環が回り始めると、動き出さずにはいられなくなる。誰かの言葉を待たず、資料よりも顧客と向き合い、手を動かして、体温のあるプロトタイプをぶつけに行く。
成功率の高い方法とは、“心の中にある火を絶やさず、動き続けられる構造”をつくること。それさえあれば、ツールも方法論も後からついてくる。
最強のフレームワークは、あなたの中にある
だから最後にもう一度伝えたい。最も成功率の高いフレームワークとは、あなたの中にある。それは、どんな問いに燃えているか。どれだけ確信を持てるか。その確信を誰にどう伝えたいか。
世の中のすべての型や理論は、それを補助するにすぎない。真に事業を創り出すのは、“燃えている人”だけだ。
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