✔︎ 50代、60代の逃げ切りの姿勢は、次世代に重い負担を残す
✔︎ 日本の未来のためには、新規事業創出とイノベーター人材の育成への真剣な取り組みが必要
✔︎ 経営層の本気の姿勢だけがイノベーションを生み、日本の未来を切り拓く
50代、60代は逃げ切るのか。次世代のために変化に抗うのか
日本において、高度経済成長の恩恵は、もはや消えつつある。日本の経済状況が変化、没落の渦中にあることは、誰しもが認めるだろう。
しかし、おそらく、この国の没落のスピードを考えると50代、60代は逃げ切れてしまう。40代はギリギリなところだが、少なからず30代、20代は、若い世代はこの変化の影響を直接受けることになる。没落の打撃が直撃する。
いまボクらが逃げ切ることを選択すれば、ボクらの子供や孫の世代には、もう没落した日本という未来しかない。この現実を前にして、50代、60代の経営層は新規事業に真剣に取り組む必要がある。
未来を創るために「新規事業創出」には真剣に取り組まねばならない
既存事業は、過去に手にした成功の延長線上にある未来しかつくれない。
過去の経験や実績に基づいて、未来を予測し、計画を立て、その計画達成のためにKPIを分解する。そのひとつひとつの手段を目的化した縦割り組織となっている。
だから既存事業は未来を創れない。過去の成功に基づいた判断基準と行動規範に縛られる既存事業の組織においては、市場環境の変化に対して適応するのも難しいのだ。
今必要なのは、変化の予兆を捉えて、変化が浸透するまでの時間のギャップを利用して、いち早く変化すること。そのためには探索活動が必要だ。そして、その先で新しい価値を創出するイノベーションに取り組まなければならない。
変化の予兆を知るために、その予兆をどう利用するかを知るために、そしてイノベーションを起こすために、新規事業に真剣に取り組まねばならないのだ。
事業創出は運であるがゆえに、打席に多く立つために、立つ人材を育成せねばならない。
イノベーションを成らせることはそう簡単ではない。最後の最後の成功の要素は運だからだ。運に左右されるから、そう簡単でないのだ。運に頼るだけでは新規事業は成功させられない。
また同時に、その成功確率を高めることもまた不可能だ。成功者の話をいくら聞いたとて、運は再現することはできない。成功確率を高める方法はないのだ。
打率を高めることは難しくとも、打席に立つ回数を増やすことはできる。そして、無駄な空振りをせず、少なくとも四球を選べるように、失敗確率を下げることはできる。
そのために人材育成をするのだ。予兆を読む力。予兆を利用する方法の選択肢。失敗確率を下げる方法論。そして、イノベーションに向き合うマインドセットと行動規範。
それらを手にしたものに、多くの打席に立たせていけば、イノベーションは成功確率を高めることができなくとも、いつか手にすることができる未来だ。
イノベーター人材を育成することが、新規事業の成功につながり、未来を創ることに繋がる。
株主に向けたポーズとしての「新規事業ウォッシュ」
しかし、現在の経営層の多くは「新規事業ウォッシュ」と呼ばれる表面的な取り組みに留まっている。
「グリーンウォッシュ」という言葉が、サスティナブルでエシカルな活動の表面だけを沿って取り組むことを指すように、「新規事業ウォッシュ」は新規事業の表層だけに取り組むことだ。
中期経営計画に「新規事業に取り組む」とだけ書き、「ビジコン」を形だけ運営し、定期的にプレスリリースを打つ。株主に対して新規事業に取り組んでいるように見せかける行為であり、実質的な成果を生み出すものではない。
だが、そうすれば株主は満足する。だから経営層は「新規事業ウォッシュ」にしか取り組まないのだ。
経営層が本気で取り組まなければ、イノベーションは成せない
経営層が本気で取り組まなければ、新規事業は成せない。新規事業の成功は経営層の真剣な取り組みにかかっている。
新規事業は総合格闘技だ。すべてのスキルや能力を1人で身につけている人などこの世にいない。ジェフ・ベゾスだろうが、スティーブ・ジョブズだろうが、イーロン・マスクだろうが、世界を変えたイノベーターも決してたった1人でそれを成したわけではない。
イノベーションを起こすなら、全社的に取り組まねばならない。イノベーションに向き合うことは、既存事業の成功体験や行動規範、その延長線上で予測した未来から逆算して与えられたKPIには反する。ゆえに、既存事業組織は、イノベーションにインセンティブが働かない。
しかし、イノベーションを成功させるためには、既存事業も動かさねばならない。だから経営層の本気の号令が必要となるのだ。
イノベーター育成に本気で取り組むために、中間管理職を正しく適材適所せよ
もちろん大前提は、変化の予兆を読み、予兆を利用する方法を選択し、失敗確率を下げる方法を、イノベーションに適したマインドセットと行動規範で、挑戦する最初のイノベーターありきだ。だから、イノベーターの育成が一丁目一番地だ。
イノベーターが組織の中で生まれていないからというとそうではない。事業を産む結果には繋がらないボトムアップ型のアイデア・コンテストやビジネス・コンテスト、単なるマッチング型のアクセラレーター・プログラムであっても、イノベーターは育成できている。正確に言えば、覚醒している。
しかし、覚醒したイノベーターを潰しているのが経営層だ。せっかく覚醒したのに、既存事業の協力を後押しせず、十分な予算や人員も与えない。経営層の保守的で消極的な態度が、イノベーターを潰すのだ。
もっとも問題が集中しているのが中間管理職だ。イノベーターに必要なのはイノベーターをアクセラレーションする中間管理職だが、多くの日本企業には新規事業に対する理解もなく学びもせず、自身の既存事業の成功体験だけでイノベーターを管理し潰す中間管理職ばかりしかいない。
経営層が新規事業について理解が薄いのは仕方がない。既存事業で成果を残した人たちが出世してつくポジションなのだから。それゆえなおのこと、中間管理職は正しく新規事業と向き合い、正しく新規事業を創出する環境を創り、正しくイノベーター人材を育成しなければならない。そしてそれを経営層と対話し、経営層の理解を促し、全社的なうねりを産み出さなければならない。必要なのはミドル・アップ・ダウンだ。
それがないから、多くの企業でせっかく覚醒したイノベーターは、事業を運良く成功させることができればいいが、ほとんどの場合失敗してしまい、イノベーターは、諦めて角を取って丸くなるか、出世コースから外れて社内で冷遇されるか、退職していってしまう。その現実に正しく向き合う責務が、経営層にはある。
経営層は自責でイノベーションに取り組め
イノベーションが生まれないのも、イノベーターが育たないのも、すべて経営層の責任だ。イノベーションの成否は、日本の未来は、経営層が新規事業にどれだけ真剣に取り組むかにかかっている。
株主からの圧力は、昨今の現状からか既存事業にフォーカスすることを望む。だからといって、経営層は自分の任期中には、何事もなく終わることを望んではいけない。
経営層は、子供や孫たちのために、未来を創れる立場にあることに矜持を持て。経営層が自らの力でイノベーションに取り組むことに本気にならねば、日本に未来はない。
いまならまだ間に合う。沈没を止め、再成長もまだ叶う。それは、イノベーションに対して、経営層が本気で取り組むかどうかにかかっている。
今こそ経営層は新規事業に対する真剣な姿勢で、未来を切り拓く時である。現状維持は沈没への道であり、真の成長とイノベーションは、経営層の本気の取り組みから始まる。
お薦めコラム
- イノベーションは「自責」によってしか成し得ない
- 目的は「イノベーションを成し、世界をより良くする」こと。それ以上でも以下でもない
- 新規事業は「やる気のある無能」がぶち壊す
- 新規事業に取り組むなら、社会課題は解決しようとしてはいけない
- デザイン思考は、イノベーションの万能薬ではない
- 新規事業のアイデアを評価するすべての大企業の社長・取締役に読んで欲しいと切に願う新規事業メンターからの超長文ラブレター
最新YouTube
最新コラム
- 新規事業推進に必要なのは「説得」ではなく、「納得」を得るための「対話」である
- 失敗は、未来の成功のための学びの場
- モノづくりに、サービスデザイン、ビジネスデザイン、システムデザインを加えた四輪がイノベーションを加速する
- 世界をより良くするためにこそ、ルールに従わない自由を強く意識すべきだ
- 出島戦略を採るべき理由:既存事業と新規事業は分かり合えないことを前提に、組織を構築する
- 経験を積み重ねて、覚醒せよ 〜既存事業マインドから新規事業マインドへの転換
- イノベーションとは既存事業には判断できない「ばかげたアイデア」に取り組むことだ
- ユーザーのコミュニティこそ、ビジネスにとっての「複利」で、成長の基盤となる
- イノベーティブ・コンフィデンス(革新への自信・確信)を育てよ
- イノベーションを実現するために「常識」を捨て去れ
- 見つけるべきN=1は圧倒的な熱狂者
- デザイン思考だからといって、アイデアを顧客起点で必ず考える必要はない