新規事業に、イノベーションに、誰も見たことのない未来に挑もうと「閃いたアイデア」は、とても大事なもののように思えるでしょう。
イノベーターたちは、そのアイデアを大事に大事に育てようとしていくものです。しかし、多くのイノベーションの失敗はアイデアそのものに固執してしまうことで起こります。
はっきりと理解しておかなければならないのは、この世界や社会を大きく変えるような革新的なイノベーションの中で、最初のアイデアが最後まで形を変えずに至ったケースは存在しないのです。
人は誰しも自分が正しいと思い込みがちです。自分が正しいと思い込むことは、心理学的にも自然なことであり、仕方がないことです。いわゆる「認知バイアス」がそうさせているから。
自分の仮説や先入観に対して、都合のいい情報だけを無意識的に集め、否定的な情報を軽視し、自らの仮説や先入観を強化してしまう「確証バイアス」。
自分の手元にある情報が正しいと思い、それを基準に他人や社会を捉えてしまう「自己中心性バイアス」。
ものごとの結果を知ったときに、それがあたかも最初から予測できていたかのように考えてしまう「後知恵バイアス」。
状況や人によって程度は異なれど、誰でも少なからず認知バイアスを生じさせてしまうものです。
イノベーションのプロセスは、仮説検証の積み重ねの先にあるものですから、認知バイアスにとらわれてしまっては、正しく仮説検証を行うことができなくなります。
ここでしっかりと認識しておくべきなのは、仮説検証とは自らの持つ仮説が正しいか確認することではなく、自らの持つ仮説が誤りだったことを証明することが重要だということです。
仮に顧客に自分のアイデアを披露して、それはいいねと賞賛を貰えたとしても、「あえて否定するとしたら」と何か間違っていることがないかを深掘りする姿勢を持つべきなのです。
それが自らの認知バイアスのフィルタを外して正しくアイデアと向き合うことであり、そのアイデアをブラッシュアップし、時にピボットしたりするために持つべき主体性に他なりません。
オススメ・コラム
- 新規事業アイデアの「閃き」はトレンドが誘発する
- イノベーションは「顧客」から始めてはいけない
- 新規事業のアイデアは、座って考えるだけでは見つからない
- 大企業でイノベーションを起こす組織は、オーケストラとジャムセッションのハイブリッドだ
- 新規事業は必ずニッチから展開すべし
- 人治経営と法治経営は、イノベーションにどう効くか
- 新規事業は「やる気のある無能」がぶち壊す
- 新規事業に取り組むなら、社会課題は解決しようとしてはいけない
- 自分が絶対的な存在と自惚れるな
- 新規事業のアイデアを評価するすべての大企業の社長・取締役に読んで欲しいと切に願う新規事業メンターからの超長文ラブレター
- イントラプレナーおすすめの新規事業参考図書 20選