アイデアを考える時、とっかかりをどこにしていますか。
もちろんアイデアの可能性は無限大で、未来に対して意志を持ち、やり続けることができれば、どこから始めてもイノベーションに辿り着くことはできます。
一方で、その紆余曲折を少しでも小さくし、イノベーションに辿り着くための確率を底上げする方法がないわけではありません。
それは「Founder/Market Fitしている」アイデアから始めること。
Founder=創設者、設立者、始祖。Market=市場。つまり、アイデアの創出者がよく知り、専門性のある市場におけるアイデアから考えることです。
①アイデアの属するマーケットに専門性はあるか
②個人的に欲しいものを考えているか
③新しい重要なインサイトを持っているか
アイデアの属するマーケットに専門性はあるか
アイデアを思いついたなら、そこからビジネスを組み立てるのに、それが属するマーケットの専門知識は必要不可欠です。
どのような技術が使われているか。バリューチェーンはどのような構造になっているか。そこにどんなステークホルダーが何を利して、何を提供しているのか。考慮・配慮・忖度しなければならない関係はあるか。ビジネスオペレーションの詳細はどうなっているのか。法規制や業界特有のガイドライン、商慣習はあるか。
事業を創る時には、既存のマーケットでビジネスがどのように行われているかを知らずに進めることはできません。
未知の領域でこの全てを理解することはほぼ不可能に近く、その場合はその領域におけるKOL(Key Opinion Leader、キーオピニオンリーダー;販売促進に影響力を持つ専門家)やその領域で実際に働いている人などの協力を仰ぐ必要があります。
しかしどこまでいってもアイデアの創出者が全てを理解することができないことが課題として残り続けます。
自分が専門性を持つマーケットさえチョイスしてしまえば、そこになんらハードルがなく推し進めることができます。
個人的に欲しいものを考えているか
他の人が欲しがるのではなく、自分自身が欲しがっているものをつくることが、イノベーションを起こすのに最も簡単な方法です。
ビジネスを創る以上、そこに課題があって、それを解決することで、顧客満足(Customer Satisfaction)・顧客成功(Customer Success)・顧客幸福(Customer Hapiness)を実現し、その対価として売上を得ることが重要です。
つまり、顧客と向き合うことこそがビジネスを創るために最も必要なことなのですが、アイデアを思いついた時、想定する顧客仮説・課題仮説を持つ顧客候補を見つけることは、結構手間取るステップです。
自分が欲しいものを作るのであれば、少なくとも一人のユーザーがいる状態から始めることができることになります。また、自分自身のために作るということは、何を作るべきかは自分の直感を信じることができることにもなります。
他の人のために作るのであれば、その人が何を欲しがっているかを徹底的にインタビューし、その上でインサイトを推測しなければなりません。
新しい重要なインサイトを持っているか
単に自分の専門性のある領域で、自分が欲しいものを作ればいいという単純な話ですが、もちろんそれだけでイノベーションに繋がるビジネスは生まれません。
必要なのはこのアイデアの中に新しい重要なインサイトがあるかどうかです。
「新しい」とは、誰もが「当たり前(普通、常識)」と思うものがある中で、自分だけが気付いた真実のことです。
「インサイト」とは、顧客が顕在化していない潜在的な課題意識や求めているソリューションのことです。
そこに気づくことこそがアイデアにとって最も重要なことなわけですが、自分の専門性のある領域であればそのインサイトに気付きやすいのは確かです。
そもそも自分が欲しいと思った時点で言語化できていないだけでインサイトがあるはずなのです。インサイトを言語化することで、アイデアはより輝きを増していきます。
もちろん、一方で自分が専門性を持つからこそ、今までの価値観に縛られてイノベーションが起こせない可能性があることに留意は必要です。
人は思いもよらないほどに「確証バイアス」に流されます。自分が正しいと思っていることは、正しいとより思い込むために情報を集めてしまったり、都合の良い解釈をしたり、反証する情報を無視したりするものです。
確証バイアスから脱し、自分が生きるマーケットでインサイトに深く辿り着くことができた時、それはもう成功が約束されたと言っても過言ではないかもしれません。