✔︎ イノベーションでは、自分のやりたいことを正確にははっきりしないまま進むことになる
✔︎ 言葉はコンセプトを形作り、真理を見出す助けとなる
✔︎ リーダーは言葉を通じてビジョンを共有し、チームを導く役割を果たすことが重要である
既存事業においては、自分がする必要のある仕事が何かを知った上で、仕事に取り組むのが普通だ。役割によって分化された組織構造そのものが役割を明確に定義している。上司や先輩による業務命令や業務指示でも明確にされる。
一方で、イノベーションにおいては、そもそも自分のやりたいと思っていることが正確には何なのか、はっきりさせることができないのが普通だ。そのもやもやした中でも、それでもなお「真理を見つけよう」と足掻く。それこそがまさにイノベーションの活動である。
しかしながら、その辿り着こうとする「真理」とは、時間と空間を超越してそこにすでに存在し、それを発見すれば良いものではない。絶対的妥当性のある真理など存在しないし、絶対的妥当性のある確信になど到達し得ない。
イノベーションにおいては真理は見つけるものではないのだ。偶然性の中で創り出していくものなのである。
イノベーションは偶然性から生まれる
行動を積み重ねる中で、知った事実、出会った人、重ねた対話。その中でたまたま繋がれ、紡がれたインサイトがイノベーションを生み出す。
その偶然を引き起こすためにこそ行動が重要だ。そしてその偶然を辿り着くべき真理へと近づけるためにこそ言葉が重要となる。
自己の価値観に軸をおいて、世界をどう定義するか。そこにこそ真理があり、それこそがイノベーションを形作る。自己と世界のあいだを媒介するのが言葉であり、言葉は世界を写しとる媒体である。
創造的な語彙を用いて、創造的な表現を行うことで、世界をより良く変容させることができる。だからイノベーションにおいてはコンセプトを言語化することが、行動と同じぐらい重要となる。
コンセプトの言語化を繰り返す
コンセプトとはメタファーだ。メタファーが創造されるとき、その言葉が世界をより良くする一歩になるかどうかは、その言葉を紡いでみないとわからない。自分が選んだメタファーを意図通りに他人に解釈してもらい、使ってもらえるような超人も存在しない。
それがPoC(コンセプト検証)である。コンセプトを他人に伝えて、共感が得られるか。自分の手を離れて、その言葉が独りで歩き始め、歯車を回していくかどうか。
理由づけによって確信を得る「理性」と、原因によって確信がもたらされる「情念」の2つが同時に動かされる言葉が定義できたとき、イノベーションの歯車が回り出すのだ。
言葉が生み出すインパクト
言葉の力は計り知れない。適切な言葉は、人々の心に火をつけ、行動を促し、変革を引き起こす。
例えば、スティーブ・ジョブズが「Stay hungry, stay foolish」という言葉を通じて多くの人々にインスピレーションを与えたように、言葉は強力なツールである。彼の言葉は、失敗を恐れずに挑戦し続けることの重要性を強調し、多くの起業家やクリエイターに影響を与えた。
言葉は単なるコミュニケーションの手段ではなく、価値観やビジョンを共有するための重要なツールだ。適切な言葉を選ぶことは、イノベーションの成功に直結する。
言葉には感情を動かす力があり、それが人々を行動に駆り立てる。特にイノベーションの過程では、新しいアイデアやコンセプトを明確に伝えることが求められる。それがチームの一致団結を促し、共通の目標に向かって進む原動力となる。
例えば、「挑戦」という言葉は、新しいことに挑む勇気を奮い立たせる。一方で、「失敗」という言葉は、リスクを避ける心理を刺激するかもしれない。そのため、ポジティブで力強い言葉を選ぶことが重要である。
さらに、言葉は文化や背景に深く根ざしているため、ターゲットとする人々に適した表現を選ぶことが求められる。異なる文化や価値観を持つ人々に対して、共通のビジョンを共有するためには、言葉の選び方に細心の注意を払う必要がある。
言葉の力を活かしたリーダーシップ
リーダーは言葉を通じてビジョンを伝え、チームを導く。強力なメッセージを発信することで、チームの士気を高め、共通の目標に向かって進む意欲を引き出す。
特に先行きが不透明で、誰も見たことのない未来を創造するイノベーションにおいては、ビジョナリーなリーダーシップは必要不可欠だ。
例えば、ネルソン・マンデラがアパルトヘイト廃止のために闘ったとき、彼の言葉は多くの人々に希望と勇気を与え、変革を推進した。
そんな彼の残した「何事も成功するまでは不可能に思えるものである」という言葉にはその真理が見え隠れする。不可能に思えるからこそ、言葉によって人々を奮い立たせることが必要なのだ。
リーダーが強い言葉を持つことで、チームは困難な状況でも前進し続ける力を得る。特に新規事業やスタートアップにおいては、リーダーの言葉が持つ影響力は絶大である。
リーダーが明確なビジョンを示し、それを力強く伝えることで、チーム全体が一丸となって目標に向かって進むことができる。
イノベーションにおけるコンセプトを紡ぐ言葉の重要性を認識しよう
イノベーションにおけるコンセプトを紡ぐ言葉の重要性は、計り知れない。言葉は単なるコミュニケーションの手段ではなく、価値観やビジョンを共有し、人々を行動に駆り立てる力を持っている。
適切な言葉を選び、それを力強く伝えることで、イノベーションの歯車を回し続けることができる。
イノベーションのヒーローは、強い詩人であり、ユートピア的な革命家なのだ。
彼らは言葉を通じて世界を変え、新しい未来を創造する。そのためには、常に言葉の力を信じ、言葉を磨き続けることが求められる。
お薦めコラム
- デザイン思考だからといって、アイデアを顧客起点で必ず考える必要はない
- イノベーションは「自責」によってしか成し得ない
- 目的は「イノベーションを成し、世界をより良くする」こと。それ以上でも以下でもない
- 新規事業は「やる気のある無能」がぶち壊す
- 新規事業に取り組むなら、社会課題は解決しようとしてはいけない
- デザイン思考は、イノベーションの万能薬ではない
新規事業Q&A
最新YouTube
最新コラム
- イノベーションのためのビジネスデザイン:視野を広げ、経験から学ぶ
- イノベーションとは知性主義に対する、反知性主義の逆襲である
- イノベーションは、Z世代と共に、未来を創る
- 自主性と挑戦を促す「問いかけ」がイノベーティブな文化を創る
- 経営は「新規事業ウォッシュ」をやめ、本気で取り組まねばならない
- 新規事業推進に必要なのは「説得」ではなく、「納得」を得るための「対話」である
- 失敗は、未来の成功のための学びの場
- モノづくりに、サービスデザイン、ビジネスデザイン、システムデザインを加えた四輪がイノベーションを加速する
- 世界をより良くするためにこそ、ルールに従わない自由を強く意識すべきだ
- 出島戦略を採るべき理由:既存事業と新規事業は分かり合えないことを前提に、組織を構築する