既存事業と新規事業で必要となるスキルやマインドセット、そしてするべき行動が異なります。まるっきり違うと言っても過言ではありません。
既存事業は、創業者や諸先輩方が既に立てた問いに対して、既に証明がされた方程式の中で活動をします。それゆえ既存事業でのエースは、ベスト・プラクティスを知る「賢者」になります。壁にぶつかったときに、賢者たる上司や先輩に質問をすれば、経験則に基づいた答えが返ってきます。
一方新規事業は、まだ誰も考えたことがない未知の問いを自ら立てて、自らその方程式を考え、自ら証明をする活動です。それゆえ新規事業でのエースは、エヴィデンスがない中で決断をする「勇者」になります。壁にぶつかったとしても誰も答えを知らないため、自らの意志と執念によって自らの手で乗り越えなければなりません。
しかしここで大事なのは、既存事業で培ってきた経験が活かせないのかというと、そうではないということ。ここを勘違いしている方が非常に多いのですが、既存事業と新規事業が進め方が違うからといって、今までの経験やスキルを捨てる必要はないのです。既存事業と新規事業で必要となる実務スキルはそう大差はありません。
95%は経験が活きます。しかしそのわずか5%の違いに気付かなければ、新規事業の推進力が格段に落ちてしまうのです。
つまりイノベーターは育成するのではなく、覚醒するものです。その5%の違いに気付くことさえできれば、これまでしてきた経験や知見をフルに活かして、事業を推進することができます。
そして、覚醒とは、神が降りてきて勝手になされるものではありません。脳に汗をかく思考と、身体に汗をかく経験を積み重ね、失敗と試行錯誤を繰り返し、それでも成功に辿り着こうと自らの限界に立ち向かい、目の前の壁に執念を持ってぶつかろうとする時、この5%に気付く瞬間が訪れます。覚醒も学習によってなされるのです。
新規事業のプロセスは、多くの人が書籍などに書き記しているため、誰でも容易に学ぶことができます。しかし座学でイノベーターになることはできません。極限に立ち向かう実践の中でしか得られない気付きが重要なのです。そうすることで、座学での学びや過去の経験・知識も含めて、自らの事業の成功のために必要な、バラバラだったピースが噛み合い、覚醒へとつながっていくのです。
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