Q. アイデアが浮かびやすい人と
そうでない人がいます。
発想力を鍛えるには、
どんな工夫が必要なのでしょうか?
✔︎ 発想は“才能”ではなく、“設計”と“姿勢”の問題である
✔︎ 情報の解釈、視点の転換、仮説の言語化が発想力を育てる
✔︎ 発想とは、問いを持ち、行動し、他者と交差することで磨かれる
アイデアが出ないのは「センスがない」からではない
アイデアが出せる人と出せない人。その差を「センスの有無」や「クリエイティビティの才能」だと思っているなら、それは幻想にすぎない。
アイデアとは、“問いの質”と“情報の解釈”から生まれるもの。つまり、知識や頭の良さより、「目の前の現象をどう見るか」「どこに違和感を持てるか」という視点の感度によって決まる。これは才能ではなく、誰でも後天的に鍛えることができる“筋力”だ。
発想できない人の多くは、「正しい答えを出そう」とする思考に縛られている。それが想像力を閉ざしてしまう。まず必要なのは、「妄想していい」と自分に許可を出すことだ。発想とは、制限を外すところから始まる。
発想力を育てるには、「問いの感度」を鍛えること
発想の第一歩は、「問いの感度」を高めること。アイデアとは、膨大なインプットの中から、違和感を見つけて深掘る力によって生まれる。
たとえば、街の中で目にした光景、SNSで流れてきた投稿、顧客との会話──それらに対して「なぜ?」「もっと良くできないか?」と問いを立てられるかどうかが鍵になる。
だからこそ、週に3つでも構わない。「あれ?」と思った出来事を記録する“違和感メモ”の習慣は極めて有効だ。こうして脳が“気づく力”を取り戻していく。
ただし、情報のほとんどはクズ石だ。その中から玉を見つけるためには、“気づく力”と同時に、“そもそも掬い上げる量”も必要だ。つまり、インプット量を増やすことも同時に重要となる。
「言語化力」がアイデアの“種まき”になる
アイデアは空から降ってくるものではない。「問い×仮説×構造」の掛け算からしか生まれない。
見た現象に対して、「名前をつける」「たとえ話で説明する」「類似事例と照らす」といった“解釈のラベル”を貼っていく。これがアイデアの土壌になる。
たとえば、「若者の読書離れ」という現象を「手触り感のない情報消費」と言い換えると、「手触りを取り戻すUXとは何か?」という次の問いが生まれる。
具体的な情報を抽象化し、概念化し、構造化する。この抽象と具体の往復が、アイデアの転用性と広がりを生むのだ。
「未来を描く」ことで、発想の自由度は広がる
発想できない人の多くは、「今あるもの」から答えを探そうとしてしまう。だが、視野を広げるには「未来を描く」ことがもっとも有効だ。
未来の社会、未来の生活、未来の顧客像──そうした“ありたい姿”を、自分の価値観から自由に妄想していい。顧客のあるべき姿を、あえて独善的に描く。傲慢で構わない。「自分たちがその未来に顧客を連れていくんだ」という強い意志こそが、発想の起点になる。
そして、その未来からバックキャストして「今、解決すべき問いは何か?」を導き出す。この「未来を描く → 今とのギャップを問う → 解くべき問いが見える → アイデアが生まれる」という思考の流れこそが、自由で豊かな発想を可能にする。
他人との対話が、発想の“エンジン”になる
発想とは、独りで黙って考えるものではない。他人との対話によってこそ視点が拡張され、思考が磨かれる。
「完成度が高くないと話せない」と思ってしまう人も多いが、重要なのは“荒削りのまま口に出す”ことだ。問いをぶつけ、返され、再び考える──その往復の中で、アイデアの芯が研ぎ澄まされていく。
新規事業において価値あるのは、「精度の高い仮説」よりも「粗くてもワクワクする仮説」だ。対話の中でプロトタイピングするように、発想は磨かれていく。
発想は“環境”がつくる
発想力を高めるには、個人の努力だけでなく、仕組みと環境の設計が欠かせない。日常的にアウトプットとフィードバックを循環させる場があるかどうかが、発想力の伸びを大きく左右する。
チームにおいておすすめなのが「ライトニングトーク」だ。週次の定例ミーティングの冒頭5分を使って、持ち回りで一人がトピックを発表し、それを起点にディスカッションする。
・「最近感じた違和感」
・「注目スタートアップのサービスを自分ならどう変えるか」
・「こうなったらいいなと思う未来妄想」
──どんな切り口でも構わない。
その後の4分間で、各自が知っている事例やアイデアを自由に投げかける。この仕掛けだけで、チームの発想モードがスイッチオンになる。
さらに脳科学の研究でも、「ひらめき」は、散歩やシャワー、サーフィンの波待ちのような“ぼーっとしている時”にこそ生まれるとされている。だからこそ、しっかり考えた後は、意図的に“余白”を持つことも忘れてはならない。
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