「自信を持て」
みんな子供の頃から親や教師によく聞かされてきた言葉ですね。にも関わらず、「自信」の言葉の定義をきちんと考えたことはありますか。
イノベーションに向き合うなればこそ、「自信」ということにはしっかり向き合うべきだと考えます。イノベーションを実現するためには自信は欠かすことはできないものだから。
「自信とは」と問いかけられれば、「自分を信じること」と答える人が大半でしょう。広辞苑によれば「自分の能力や価値を確信すること。 自分の正しさを信じて疑わない心」と定義されています。
多くの人は「自分の能力や価値を確信する」ことを、過去の実績に基づいて行います。自分がこれまで行ってきたことに対して信じられるほどに至っているかどうか、と。
しかし一方で、未来に大きな成果を出す可能性が、自分の能力や価値にはあると信じて疑わないことが自信であると捉えることもできます。
過去の自分を信じるのか。未来の自分の可能性を信じるのか。
イノベーションにおいては当然のことながら、未来の自分の可能性を信じることが、必要な自信です。それが「イノベーティブ・コンフィデンス」なのです。
もちろんだからといっていきなり未来の自分の可能性を信じるのは難しいものです。イノベーションの初期のアイデアの段階ならそれは当然のこと。
初めて人にアイデアを披露する時には不安でいっぱいでしょう。いつだってその一歩目には勇気がいるものです。そして時に「アイデアにこそ価値があるのだから、むやみやたらに他人に披露するものではない」と自分を納得させる論理を持ってしまい、アイデアを披露することに二の足を踏んだりもします。
アイデアの初期段階で否定をされると、萎縮してうちに閉じこもってしまうのは当然ですし、それを恐れることも当然です。
イノベーティブ・コンフィデンスを育むためには「受容の体験」をすることが大切です。アイデアの初期段階では、ラフなアイデアで誰かに認めてもらうこと。それが非常に重要なのです。
例えば、常に否定から入るような人にはアイデアを披露せず、よりビジョナリーで先見の明のある人にアイデアを肯定的に膨らませてくれるような人にアイデアをぶつけてみること。共感が得られれば、そこで共鳴が生まれ、アイデアがどんどん広がっていくような感覚を得られるでしょう。それがイノベーティブ・コンフィデンスの一歩目になります。
イノベーションを追求する組織において必要となるのは、イノベーティブ・コンフィデンスをそれぞれがつけていく環境づくりです。イノベーションを創出する心理的安全性は常にそこにつながっていなければなりません。
イノベーションは常に「曖昧さへの恐怖と闘う」ことが求められます。全てのエヴィデンスが揃うわけでもなく、ロジックが整わないことの方がほとんど。その時にその曖昧さを抱き抱えたまま、前に進むのか戻るのかを決断して歩みを進めなければならないのが、イノベーションへの道。
曖昧さを排除しようとエヴィデンスを掻き集める努力をすることは、その場に足踏みをしていることに他なりません。なぜならば曖昧さが完全に排除された状態とは、イノベーティブな要素が完全になくなった状態でもあるから。
答えを知る者が誰もいないのがイノベーションの世界です。曖昧模糊とした世界だからこそ、目指すべき未来のために、イノベーションに向き合う担当者が、確固たる確信を持って突き進むほかありません。ワクワクする未来を描き、自ら作り出せるのだと信じること。それこそがイノベーターに最も求められるマインドセットです。
そのマインドセットを醸成し、イノベーティブ・コンフィデンスを持つためにこそ、受容的な仲間やチームの存在が重要な要素となるのです。
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