新規事業に挑戦すべき経営的なタイミングは、どのように、また何で判断すればいいでしょうか。
スマートフォンの登場やコロナ禍など、技術革新や天災などによる外部環境の変化が、昨今は非常に激しい時代です。
既存事業の収益が安定しなければ新規事業に挑戦すべきかどうかも悩ましく、その状況によっては企業によっては全面的にストップをかけたり、撤退をするケースも出てきています。
質問に答えるならその答えは「新規事業に取り組むべきベストなタイミングはない」ともいえるし、「常に新規事業に取り組むべきベストなタイミングである」ともいえます。
事業には「ライフタイム」があります。どんなにうまくいっている事業も、いつか衰退は訪れます。新規事業に取り組むというのは、その時に向けて準備をすることに他なりません。
いうなれば、企業の成長とは、既存事業と新規事業、オペレーションとイノベーションを螺旋的に繰り返しながらするものなのです。どんな状況にあっても新規事業には取り組まなければなりません。
もちろん、取り組みやすいタイミングはあります。成長期の後半と衰退期の前半です。
成長期の後半は、創業期から成長期にかけて構築してきたビジネスモデルによって一定の成長を遂げ、収益が安定してきており、新規事業に取り組む組織的な余裕が出てきます。一方で、成長の鈍化する傾向も出始めており「次の柱」を作ることに意識が向き始めます。
衰退期の前半は、安定していた成熟期から衰退の始まりが見え始めたタイミングで、危機感を抱き始めていますから、新規事業によってその危機を乗り越えようという機運が少しずつ高まり始めます。
このタイミングでは、経営層も中間管理職も「新規事業に取り組むべき」という空気感が流れているので、新たな挑戦に比較的背中が押されやすい環境といえます。
一方で、創業期〜成長期の前半や衰退期の後半は「そんなことより目の前の仕事に集中しろ」と言われますし、成熟期は危機感もなく新規事業に挑戦する空気感がありません。
しかしながらこれらはあくまで社内の空気的に取り組みやすいタイミングなだけです。
成長期がいつ終わるか、成熟期がいつ終わるかなど、誰にも予測しうるものではありません。内部環境の経年劣化は予期できるかもしれませんが、外部環境の劇的な変化は誰にも予想できないからです。
だからこそ、新規事業のタイミングなど意識せず、いつか既存事業が衰退する日に備えて、常に積極的に取り組み続けなければならないのです。
さらに踏み込んでいうならば、既存事業を自ら衰退させ、ビジネス・トランスフォーメーションさせていくことこそ、カニばるからと恐れて潰すのではなく、自社で積極的に取り組むべきなのです。