イノベーターはエゴイストであるべきです。目の前にある「当たり前」といわれる常識や慣習、ルールに縛られず、自身の価値観から「世界はこうあるべき」と定義して、それを実現するためになるふり構わずその実現に向けて突き進む。その姿はまさにエゴイストそのものです。
スティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾス、イーロン・マスク…。世界を大きく変えたイノベーターは皆エゴイストであるというのは、誰もが疑う余地はないはずです。
しかしこと日本においては、特に日本の大企業においては、エゴイストであることをよしとしません。周りに合わせて、角を取り丸くなり、平均点的人材になることが強制されます。それでイノベーションを実現することはできるのでしょうか。
そこで「世界一のエゴイストでなければ世界一のストライカーになれない」と掲げ、日本サッカーや実在の選手を卑下するような描写から話題になった、史上最もイカれたサッカー漫画「ブルーロック」から、未来を切り拓く資質を学びます。
「ブルーロック」に学ぶ未来を切り拓く資質
主人公の潔世一は、いつか日本代表のエースストライカーになりワールドカップで優勝するという夢を胸にサッカーを続けてきた高校2年生。
勝ったら全国大会という埼玉県大会の決勝で、ゴール前で「11人でやるスポーツだ」という意識からパスを出した結果、チームメートがゴールを外し、残念ながら全国大会にはいけませんでした。
失意の日々を過ごしていたある日、潔世一の下に「強化指定選手」に選出された通知が届きます。会場に向かうと日本をワールドカップで優勝させるために雇われたという絵心甚八から説明がされました。
それは「選出された300人の中から世界一のストライカーを創る実験をする」というブルロック(青い監獄)という施設でした。
多くは語られないまま、今までのサッカー生活とは決別し、共同生活を送りながら特殊なトレーニングを受け、サバイバルに勝ち抜き299名を蹴散らして、世界一のストライカーになることを志すと、説明も少なく宣言された時、会場からは不満の声が溢れました。
仲良し絆ごっこしたいなら帰れ
それを聞いた絵心甚八はこう告げます。
11人で力を合わせて戦うスポーツ…?
「絆を大事に」?
「仲間のために」…?
違うんだよ
だからこの国のサッカーはいつまで経っても弱小なんだ…
この言葉に日本社会においてイノベーターが生まれない原因が凝縮されていると感じます。
確かに日本人の国民性の賜物として日本企業の組織力が強いということは明確にいえることです。それは高度経済成長をみれば明らかです。Japan as No.1といわれたあの当時、日本型経営こそ学ぶべきであるとこぞって世界の経営学者が日本企業を研究していました。そう、間違いなく日本企業こそが世界一でした。
しかしそれは戦後の焼け野原から経済が成長し続けるという市場環境があり、海外で起きたイノベーションを日本に持ち込むというセカンドペンギンを徹底したことが、日本企業の強さと合致し、Japan as No.1を実現したことに繋がりました。
日本人はふと気づいたのです。頂に立った時に、追いかけるべき、真似をすべき対象がいなくなったことに。そして日本は失われた30年へと突入しました。そこから脱する光明も見えないまま、長い長い暗闇を彷徨っています。
日本は今でも組織力は強いでしょう。しかしいつの時代も世界を変えるイノベーションは、組織力によって生まれてきません。イノベーションは個の力によってのみ生まています。
技術革新の速度が進み未来が不確実で、しかも日本は人口減少に伴って史上成長も見込めない。その状況においては未来を切り拓くイノベーションが必要不可欠です。しかし未だ根深く残る高度経済成長の組織力を信奉する昭和の価値観が足を引っ張っています。このままでは日本企業に、日本国に、光明が差すことはないでしょう。
それにも関わらず「モチベーション・マネジメント」だの、「心理的安全性」だの、日本人は未だに組織力をどう強化するかというところばかりに目を向けています。スタートアップにおいても然り。未だに昭和の価値観の残滓がボクらを縛り付けているのです。
しかし、絶対に組織力ではイノベーションは生まれません。
世界一のエゴイストでなければ、世界一のストライカーにはなれない
20世紀最高のフットボーラー エリック・カントナは言った
「チームなんてどうでもいい
俺が目立てばいい」とW杯優勝3回
史上最高のフットボーラー ペレは言った
「世界一のFW、世界一のMF、世界一のDF、世界一のGK
どれを訊かれても自分だと答える」とどうだ?
最悪だろ!?
でもこいつらがNo.1なんだ!
革命的なストライカーたちは皆!!
稀代の”エゴイスト”なんだ
日本サッカーに足りないのはエゴだ
イノベーションとはなんでしょうか?
「世の中の当たり前を否定し、未来の当たり前を作る」ことです。
組織力は今の「当たり前」の世界にしか存在し得ません。「当たり前」という共通認識をもとに設計されたオペレーションに基づいてマネージメントするのが組織力です。だから組織力からイノベーションは生まれないのです。
イノベーションは、組織力やチームワークなんてものはゴミ箱に捨て、自らが自らの手で自らの信じる未来を実現するエゴイストによって成し遂げられるものなのです。イノベーションに必要なのは「組織力やチームワークという常識」を捨てること。そこからしかイノベーションは始まりません。組織力やチームワークは、イノベーションにとっては足枷でしかないのです。
誰に何をいわれようとも信じる未来(ビジョン)を、
絶対に達成するということを目的(パーパス)に設定する。
それに強い使命感(ミッション)を持ち、情熱を燃やす。
周りにクレイジーだといわれても、性格が最悪だなんていわれても、結局のところ世界をより良くすることに辿り着きさえすれば、賞賛される。スティーブ・ジョブズ、ジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの世界を変えたイノベーターを見れば、それは火を見るより明らかでしょう。
さあ、日本人よ、エゴイストになれ。
己のビジョンの達成を何よりの喜びとし、
その瞬間を実現するためだけに生きろ。
それが「イノベーター」だろ?
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