成熟事業を持つ企業における新規事業では、「弊社のブランドは認知度が高い」「顧客からの信頼がある」「顧客に愛されている」などということを理由に、ブランドを優位性に掲げ、ありきたりなプロダクトアイデアを掲げるケースがよくあります。
はっきり申し上げるなら、ブランドはそれのみで優位性にはなり得ません。
本当にそれで最終消費者はわざわざ手間をかけて買うでしょうか?今の代替手段からスイッチングコストを払ってでもそちらで買いたいと思うでしょうか?答えは否です。
食品や日用雑貨、消費財メーカーなどで特に勘違いしがちなのが、自分たちのブランドが愛されてるということ。もちろん愛されているのは間違いありませんが、ここで意識しなければならないのは、あくまで愛されているのは「プロダクトブランド」であって「コーポレートブランド」ではないことです。
自分の好きなプロダクトはあっても、企業そのものに愛着を感じているわけではないのです。もちろん一昔前にそういう時代があったことは否定しませんが、より多くの選択肢に溢れる現代において、コーポレートブランドに顧客がついているわけではないことをしっかりと認識すべきです。
また同時に、メーカーには顧客との接点もないことも認識しなければなりません。顧客はテレビCMで商品を(芸能人が歌って連呼するイメージと商品名を)認識し、スーパーマーケットやGMS、ドラッグストアなどの棚に並んでいて始めて、その商品を手に取ります。
その商品が欲しくて買うのではなく、たまたま刷り込まれていた商品が、たまたま棚にあったから買うのです。それはブランドとは言えません。
新規事業は、あくまでブランドを軸にするのではなく、顧客の課題とソリューションとしての提供価値をしっかり構築するところから始めるべきです。
もちろんそこに信頼性や他企業とのコラボレーションのしやすさなどの、ブランドによる優位性は存在します。それは価値の軸ではなく、あくまで新たに創出する価値をブーストする手段であると認識すべきです。