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新規事業のファシリテーターは、どんな人材に任せるべきか?

新規事業のファシリテーターは、どんな人材に任せるべきか?

Q. 事業化に向けては部門横断的なメンバー構成で進めることが必要と感じているが、その中でも特にファシリテーターの存在が大きいと考えている。自社の人員構成の中で、どのような人材がファシリテーターに望ましいか。

  • ファシリテーターの本質は「仕切る力」ではなく「問いを立て、決めさせる力」
  • 既存事業のエースではなく、フラットに問える立ち位置の人間を選ぶ
  • 「中立」とは意見を持たないことではなく、答えを言わずに問いで介入する能動的な力

「仕切れる人」はむしろ危ない

部門横断チームをつくると、たいてい「ファシリテーター向きの人がいないか」という話になる。 そのとき名前が挙がりやすいのは、会議でよく発言する人、リーダーシップがあると言われている人、段取りがうまい人だ。

しかし、その選び方はほぼ間違っている。 仕切りたがりの人間がファシリテーターに就いたとき、何が起きるか。

会議がその人の結論に向かって最短で収束する。他のメンバーは発言しなくなる。発散するべき場面で早々に収束し、問うべき問いが問われないまま、既定路線が「チームの総意」として固まっていく。部門横断の意味が、完全に死ぬ。

新規事業のファシリテーターに本当に求められる資質は、逆なのだ。

まず、「中立でいられる力」。自分の意見を持ちながらも、場に出さずにいられる強さ。これは、声が大きい人間には難しい。自分の見立てを早めに言いたくなるのが人の常だ。

次に、「問いを立てる力」。答えを言うのではなく、チームが考えないといけなくなる問いを置く技術。「この課題の本質って何ですか?」でも「誰のどんな状態を変えたいですか?」でもいい。場の論点を一段深く掘り下げる問いを、タイミングよく投げ込める人間だ。

そして、「摩擦を設計する力」。新規事業の初期は、なんとなく仲良くやっていても何も生まれない。むしろ、意見がぶつかることが必要だ。ファシリテーターは、摩擦が起きにくい場に、意図的に摩擦を持ち込める人間でなければいけない。居心地よく終わった会議は、たいてい何も決まっていない。

最後に、「決めさせる力」。議論を整理し、選択肢を可視化し、チームが自分たちで決断を下せる状態を作る力。ここが一番難しい。ファシリテーターが決めてしまうのではなく、メンバーが「ボクらが決めた」という感覚を持てる場を設計できるかどうかだ。

誰を選ぶか――エースではなく、フラットに問える人間を

社内の誰をファシリテーターに据えるか、という問いへの答えは一見シンプルに聞こえるが、実際には難しい判断が伴う。

既存事業のエースを入れたくなる気持ちはわかる。 優秀だし、社内の信頼も厚い。だが、既存事業で評価されている人間は、既存の論理の中で最適化された判断をする。それが強みだが、新規事業の文脈では制約になる。「それって既存事業との競合になりませんか」「リソースが取られますよね」という視点が無意識に優先される。これは悪意じゃない。その人の体に染みついた成功体験の産物だ。

では誰が向いているか。

一つは、役割としての立場が「どの部門の側にも属さない」人間だ。全社的な視点を持ちながら、特定事業に肩入れしていない。人事、企画、経営企画室のような部門に多いが、肩書ではなく「心理的に中立でいられるか」で見るべきだ。

もう一つは、「問いかけることを恐れない人間」だ。上位者に対しても「それはなぜですか」「本当にそうでしょうか」と言えるかどうか。これは職位と無関係で、むしろ若手の方がやりやすいケースも多い。しがらみが少ない分、素直に問いを立てられる。

ただし、若手をファシリテーターにする場合は注意がある。役員や部長クラスが「意思決定権者」としてメンバーに加わっていると、事実上ファシリテーターが機能しない。その場合、上位者の発言が場を支配し始める。若手が「決めさせる」役割を果たすには、チームの権力構造を最初から意識して設計しておく必要がある。

「中立」は、意見を持たないことではない

ファシリテーターに中立を求めると、「じゃあ自分の考えは黙っていればいいのか」と誤解されることがある。 それは違う。中立とは無色透明になることではなく、自分の見立てを持ちながら、それを場に押し付けないでいられる強さのことだ。

黙って司会に徹するファシリテーターは、それはその会議の参加者やチームを放置していることと同義だ。 議論が浅いところで止まっているのに問いを足さない。対立を避けて曖昧なまま先へ進む。時間だけが過ぎて、何も決まらない。これは中立ではなく、ただの放任だ。

本当のファシリテーターは、能動的に介入する。「今の話、前提がずれていませんか」「その結論、誰の課題を解いていますか」と、議論の質が落ちた瞬間に切り込む。ただし、答えは言わない。問いで介入する。自分の意見を通すためではなく、チームの思考を一段深くするために口を開く。この「能動的な中立」こそが、一番難しく、一番価値がある。

チームの構造は、最初に設計しないと手遅れになる

部門横断チームは、立ち上がった後に「ファシリテーターどうしよう」と決めようとすると、すでに遅い。 動き始めたチームには、すでに非公式な力関係ができている。声の大きい人、上位者、経験者が事実上のリーダーとして機能し始め、ファシリテーターは「司会」に成り下がる。

だから、チームを立ち上げる前に決める。 誰がファシリテーターで、誰が意思決定権者なのか。これをメンバー全員に明示する。特にファシリテーターの役割が「議論の流れを管理する人間であり、答えを持つ人間ではない」ということを、チームの共通認識にしておく必要がある。

言葉で書くと当たり前に見える。だがほとんどのチームはここをやらない。なんとなく決まり、なんとなく始まり、なんとなく既存事業の論理に引き戻されていく。

最初の設計が、三ヶ月後のチームの質を決める

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