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トラクションという名の果実は、自らの手で力強く奪い取ろう

#growth
トラクションという名の果実は、自らの手で力強く奪い取ろう
  • 最初は「スケールしないこと(Do Things That Don’t Scale)」に、あえて全リソースを叩き込む
  • 顧客が息づいている場所に、こちらから礼儀正しく、しかし「殴り込み」をかける覚悟を持つ
  • 集客という名の勝利は、洗練された「技術」の結果ではなく、ドロドロとした「執念」の結果だ

賢者のように冷徹に考え、野蛮人のように荒々しく動く

綺麗なオフィスに閉じこもり、小洒落たマーケティング理論や最新のAI広告運用。そんなものに逃げてはいけない。それは既に道が切り拓かれた後の「管理者のための道具」に過ぎない。

最初のトラクション、つまりゼロからイチを生み出す爆発的なエネルギーは、決してスマートな広告運用や有名インフルエンサーの登用から生まれるのではない。それはリーダーの泥まみれになりながらの「圧倒的な営業」からしか生まれないのだ。

相手の目を見つめ、一人ひとりに心のこもったメールを送り、一人ひとりに直接会いに行き、そして一人ひとりが抱える切実な課題を、その目の前で一つずつ解決してみせる。

「なぜ、今この世界に僕たちのサービスが必要なのか」を、相手が耳を塞ぎたくなるほど情熱的に、そして執拗に語り続けること。100人を熱狂させるという偉業を成し遂げるためには、まず目の前の一人を、僕たちの狂信者にしなければならない。

この「最初の一歩」の鉛のように重たい。しかし、その価値を知る者だけが、後に100万人の巨大なマーケットを動かす資格を得る。

最初はあえて「スケールしないこと」に、すべての情熱を注ぎ込む

「効率的に集客したい」「自動化したい」という甘い誘惑は、事業の初期段階では猛毒でしかない。

ポール・グレアムの教えを借りるまでもなく、最初期に僕たちがやるべきなのは、将来的にスケール不可能な、あまりにも非効率で、あまりにも人間臭い行動だ。

手書きの招待状を書くこと、ユーザーの家まで行って設定を手伝うこと、彼らの不満を深夜までチャットで聞き続けること。これらは一見すると時間の浪費に見えるだろう。

だが、この「非効率な深掘り」を通じて得られるインサイトの圧倒的な密度こそが、プロダクトを本物へと進化させる。

一人の切実な願いを叶えるために、システム化されていない人力のサポートを惜しまない。その「異常なまでのおもてなし」を経験したユーザーは、もはや単なる顧客ではなく、僕たちと共に戦う「戦友」へと変わる。

泥臭い、自動化できない、あまりにも手作業。そんな「スケールしないこと」の積み重ねが、やがて他の誰にも真似できない、鋼のように強固なトラクションの土台となっていく。僕は、最初から効率を語るリーダーを一人も信用しない。

「顧客がいる場所」に深く潜入する

ボクたちの理想の顧客は、今どこで、どんな空気を吸って息をしているだろうか。

それは特定のクローズドなコミュニティか、特定のSNSの中の熱を帯びたハッシュタグか、あるいは特定の駅前の、どこか寂れた居酒屋の中か。

そこに、迷わず飛び込もう。彼らの交わす生の会話に耳を傾け、彼らが日常的に使っている「言葉」を盗み、彼らが喉の奥に抱えている「悩み」を、その場で即座に解決してみせるのだ。

AIによる社会変革が今まさに怒っている。その新しいパラダイムにおいて、マーケティングとは単なる「予算の投下」ではなく、市場からの「信頼の獲得」という名の長い旅路に他ならない。

「この人が作ったものなら、一度試してみる価値はあるかもしれない」

そう思わせるための、小さな「貸し」を市場に対して、執念深く作り続ける。

トラクションとは、僕たちが長年積み上げてきた信頼のエネルギーが、ある一定の閾値を越えて、激しく爆発する現象のことを指す。

戦場は、常に画面の向こう側の「現場」にある。

集客は「技術」ではない。それは、最後まで諦めなかった者の「執念」の結果だ

最新のアドテクや、巧みなバズメールのテンプレートをいくら集めたところで、そこに「魂」が宿っていなければ、誰の心も動かすことはできない。

集客とは、一対一の泥臭い決闘の連続だ。一人の首を縦に振らせるために、何十回と断られ、それでもなお「これこそが、あなたの人生を救う唯一の光だ」と言い切れる強固な意志があるか。

僕は、数字の管理に長けたマネージャーよりも、最後の一人が「Yes」と言うまで絶対に引き下がらない、飢えた狼のような開拓者をこそ、心から信頼する。

戦略は当然必要だ。だが、その戦略を実行しきるのは、深夜のオフィスで一人、誰にも見られずに次のメッセージを練り上げる、あなたの孤独な執念なのだ。

技術に溺れるな。執念という名の燃料を燃やし続けよう。その炎が、冷え切ったマーケットに、ようやく小さな温もりを与え始めるのだ。

「増殖」という名の火種を、プロダクトのコアに最初から仕込んでおこう

ただ単にユーザーを連れてくるだけでは、僕たちの仕事は半分しか終わっていない。

連れてきた一人のユーザーが、自らの強い意志で「次のユーザーを自分の手で連れてくる」という自律的な仕組みを、プロダクトのDNAの中に、最初から深く刻み込んでおこう。

  • 二人で、あるいはチームで使うことで、利便性が一気に跳ね上がる共有機能
  • 他の人に紹介しないではいられないほど、圧倒的で感動的な「ユーザー体験」
  • 所有していること、使っていること自体が、誰かに自慢したくなるような「誇り高いデザイン」

一度着火したトラクションの火を、どうやって巨大な上昇気流に乗せて、一気に広げていくか。

その「延焼の設計(バイラルループ)」が緻密にできていない集客は、底に穴の空いたバケツに、血を流しながら水を注ぎ続ける絶望的な作業に過ぎない。

常に「次の一人」を自然と連想させるような、中毒性の高い体験を、プロダクトの生存のコアに据えよう。その火種が、やがて大火災となって世界を焼き尽くす。

トラクションとは、リーダーの「体温」の伝播だ

冷たく無機質なデジタル社会の中だけで、人の心が大きく動くことは決してない。

ボクたちが抱く、狂気にも似た情熱が、まず最初の一人のユーザーに熱く伝わり、そのユーザーの受けた強烈な感動が、また次の誰かの重たい腰を動かす。

その、一人から一人へと手渡されていく熱伝導こそが、トラクションの正体であり、ボクたちがこの命を削って追い求めるべき、唯一の真実なのだ。

加速しよう。

一度正しく動き出したトラクションという名の巨大な車輪は、やがてボクたちの想像を遥かに超える巨大な「うねり」となり、古びた世界を飲み込んでいくだけの圧倒的な力を持ち始める。

今日、自分の「足」を使い、自分の「言葉」を使い、顧客をたった一人でも獲得して見せただろうか。

冷たいモニターの向こう側で、誰かの凍りついた感情を震わせる「熱い言葉」を、一つでも投げかけることができただろうか。

未来は、自ら動いた者にだけ、その微笑みを向けてくれる。

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