新規事業 サプリ

ビジネスコンテストから、事業は生まれない

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ビジネスコンテストから、事業は生まれない
  • ビジコンは「審査員」を喜ばせる「ハレ(祝祭)」の場でしかない
  • 事業とは「顧客」と対峙し続ける泥臭い「ケ(日常)」の生存競争だ
  • ステージを降りた瞬間に放り出される「荒野」で、どれだけ泥を啜れるか

「新規事業ごっこ」の熱狂が、ボクたちの目を曇らせる

ここ10年強の間、日本中で繰り返されてきた光景がある。 煌びやかなステージ、熱いプレゼンテーション、そして審査員による称賛と勝者のガッツポーズ。

「社内ビジネスコンテスト」は、確かに社内に一時的な熱狂を生み出し、イノベーションが起きているかのような錯覚を与えてくれる。

しかし、ボクはあえて言いたい。 「ビジネスコンテストから、事業は生まれない」

それは、運動会をすればオリンピック選手が育つと信じているようなものだ。 きっかけにはなるかもしれない。 だが、コンテストという構造そのものに、事業創造を阻害する致命的な欠陥が潜んでいることを、ボクたちは直視しなければならない。

「ハレ」の論理と、「ケ」の冷徹な事実

コンテストは、徹底的に「ハレ(祝祭)」の場だ。 そこでの勝敗を分けるのは、審査員という「おじさん」たちをいかに気持ちよくさせ、納得させるかというプレゼン能力である。

一方で、事業とは徹底的に「ケ(日常)」の営みだ。 泥臭いドブ板営業、顧客からの冷たい拒絶、終わりのないプロダクト改善。 そこには拍手もなければ、ドラマチックな瞬間などほとんどない。

前者は「評価者」を向き、後者は「顧客」を向く。

この決定的な断絶を無視したまま、コンテストの勝者を「起業家」として祀り上げるから、悲劇が起こる。 ステージの上で輝いていた彼らは、ステージを降りた瞬間に、厳しい荒野に放り出され、そこで独り凍え死ぬ。

過去10年、ボクたちはどれだけの「尸(しかばね)」を築いてきただろうか。

「事務局」という名の伴走者が担う、血の通ったエコシステム

この「ごっこ遊び」の断絶を埋めるのは、イントラプレナー個人の努力だけではない。 組織の側にも、ステージの先の「荒野」で彼らを生き残らせるためのエコシステムを構築する責任がある。

多くの企業において、コンテストの事務局は「運営屋」に成り下がっている。 イベントを成功させ、見栄えの良い報告書を上げることに奔走し、肝心の事業が荒野で凍えていることには無関心だ。

だが、真に価値ある事業を生む企業は違う。 事務局自体が、イントラプレナーと共に血を流す覚悟を持っている。 制度の隙間を埋め、既存事業という名の巨大な慣性に抗い、彼らが「日常」という泥沼で足を取られないよう、文字通り泥にまみれて伴走する。

本気のビジネスに挑むなら、外部の「ビジコン運営会社」に丸投げするような安易な選択は捨てろ。 中の人間が本気で挑み、組織としての覚悟を形にする。 そこにしか、成功と失敗を分ける境界線は存在しないのだ。

「入場券」を手に入れた、その先の荒野へ

コンテストはゴールではない。 スタートラインですらない。 それは、過酷なサバイバルレースに参加するための「入場券」にすぎない。

本気で事業を生み出したいのなら、イノベーション・シアターの熱狂に酔いしれるのは今日で終わりにしよう。

審査員の評価など、どうでもいい。 目の前の顧客が、あなたのサービスに自分の財布を開くかどうか。 その一点、ヒリヒリするような真実だけに真摯に向き合う覚悟はあるだろうか。

事業を生むのは、コンテストの順位ではない。 「狂気」に近い個人の情熱と、それを支える組織の「執念」、そこでどれだけ泥を啜れるかという「覚悟」だけだ。

荒野で生き抜く者だけが、星(スター)になる

もしあなたが今、何らかのコンテストに挑んでいるのなら。 あるいはそれを主催しているのなら。 その企画は、コンテストが終わった後の「長い日常」を生き抜くための準備ができているか、自問してほしい。

事業家を育てるのは、華やかなピッチの技術ではない。 誰も見ていない場所で、たった一人の顧客のために、何度でも立ち上がる力だ。

祝祭は、もう終わりだ。 さあ、チケットを握りしめて、荒野へ踏み出そう。

その先にある、本当のビジネスという名の闘争へ。 ボクたちが目指すべきは「ビジコンの勝者」ではなく、「市場の生存者」なのだから。

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