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ビジコンで「大玉」を見極めるには?

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ビジコンで「大玉」を見極めるには?

Q. ビジネスコンテストの初期の応募段階で、「これは大きくなる」という構想かどうかを目利きするには、どんなポイントに注目すればよいのでしょうか?

  • ︎ 応募時点の完成度よりも「未来の拡張性=グランドデザイン」が鍵
  • ︎ 「誰に、どんな変化を起こすか」が明確な構想はスケールする
  • ︎ アイデアの良さではなく「問いの純度」が大玉の目利き軸になる

「今」の完成度ではなく、「未来の拡張性=グランドデザイン」を見る

**ビジコン応募時点で最もやってはいけないのは「完成度」で判断してしまうことだ。**初期構想の段階では、情報も粗く、実現性も見えづらい。それでも、後に大玉へと成長するアイデアは、例外なく「仮説の構造」がしっかりと描かれており、「未来への拡張性」の予感が感じられるものです。

**つまり、「今の一手」だけではなく、未来の構造としての「グランドデザイン」が描けているか。**いま構想している事業が、どのようなステップを経て成長し、どのような社会構造を生み出すか。最終的に、他者を巻き込むプラットフォームにまで育てることができるのか──それを構想できているかどうかが、大玉か否かの分かれ道となる。

「初速の売上」は必要ない。 むしろ最初は泥臭く小さなところから始まっていてもいい。ただし、その構想の先に「大きく羽ばたく未来」が見えているか。これが大玉を見極めるときに最も注視すべき点である 。

「誰に、どんな変化を起こすか」が言えているか?

**とはいえ、グランドデザインを起案者だけで描き切るのは難しいものである。**その時に見極める最初の視点は、「何をやるか」よりも「誰に、どんな変化を起こしたいのか」が明確に語られているかどうかだ。

**変化が明確でないアイデア──「便利そう」「面白そう」で終わっているものは、目新しさがあっても持続可能な価値にはつながらない。**ビッグビジネスにスケールすることは難しい。

優れたアイデアは必ず、“変化の設計図”を持っている。 その変化が「個人の行動」「組織の意思決定」「社会の構造」といったスケールに波及していくものであれば、大玉になり得るポテンシャルは十分にある。何を変えたいのか、そしてその変化はどんな“代替困難性”を孕んでいるのか。それが見えるアイデアにこそ、大きな事業に育つ種が宿っている。

グランドデザインに不可欠な「5つの視点」

**もう少し構造的に語るならば、「応募者自身がどのような視座・視点・視野を持っているか」を見抜くことが重要になる。**以下のような「複眼的な視点」を構造的に持てているかが重要となる。

・視座の高さ:抽象度の高い「理想の未来」から逆算できているか ・視点の多さ:顧客・社会・企業・競合など多様な立場で構想を見直しているか
・視野の広さ:市場の全体構造を捉えたうえで、自分のポジションを設計しているか
・視点の深さ:表層の課題にとどまらず、顧客の“構造的課題”に踏み込んでいるか
・時間軸の長さ:今の顧客行動だけでなく、将来の行動変化まで含めて考えられているか

この5つの観点がしっかりと言語化されており、それが「未来に向かう物語」として組み立てられていれば、その構想はたとえ今が粗削りでも、伸びしろの塊である可能性が高い。

顧客行動と構造変化、そして未来妄想の3点で見る

多くの起案者は「顧客課題の解決」にだけ焦点を当てた構想を提出する。「新規事業は顧客の課題から始めるべきで、ビジネスの構想を考えるのは後回しで良い」と、デザイン思考原理主義者の間違った考えが普及してしまったことに起因する。

しかし、真にスケールする構想とは、顧客課題の解決にとどまらず、それによって「顧客行動がどう変わるか」「業界構造がどう変わるか」、そして「顧客の未来がどう変わるか」まで踏み込めているものだ。

「既存の消費行動がこう変わりつつある」「産業構造がこう歪んでいる」「この社会課題が放置されている」──そうした構造的な切り口を持ち、その上で「こんな世界が当たり前になるはずだ」と妄想を描けている案には、非連続な成長の起点がある。

たとえば、「高齢者の孤独を減らすためのマッチングサービス」という構想があったとする。 このままでは小さな領域の解決にとどまってしまうが、「人との接続インフラとして、行政・NPO・医療機関を巻き込んだ共助システムへと昇華する」と構想されていれば、そのスケールの可能性は一気に跳ね上がる。

どんな未来に対して、どんな社会構造を提案しているか。 ──この構造思考こそが、グランドデザイン的目利きの本質である。世界を変える事業は、例外なく“既存の構造をズラす問い”から始まっている。

「売上のミルフィーユ構造」が描けているか

**もう一つ、目利きの視点として見ておきたいのが、「収益構造のミルフィーユ化」が描けているかだ。**スケーラブルな事業とは、1つの収益モデルに依存せず、段階的に複数のマネタイズポイントを重ねていく構造を持っている。

例えば、初期はtoC向けサブスクでマネタイズし、中期で法人向けデータ提供、後期には業界横断的なマーケットプレイス展開──このようなステップが描かれていれば、「今は小さくても、大きく育てられる構造」を持っていると評価できる。

最初は単一のペインから始まっていても、「この技術はこう波及する」「このデータ構造はこう展開できる」「この体験価値はこの領域にも接続できる」と、面での展開シナリオが見えていれば、拡張性のポテンシャルは高い。

単なる売上目標ではなく、「どういう因数分解で伸びるのか?」 「どの指標が複利で成長するのか?」といった“仕組みの解像度”を確認することが重要である。

逆に、課題設定と解決方法がぴったりハマりすぎているものは要注意だ。 最初の仮説が崩れたときに脆い。“用途の再定義”や“別文脈での活用可能性”などを自然に語れるアイデアのほうが、実行中の探索に耐えられる。大玉の条件とは、成長余地の設計力である。

「アイデアの魅力」よりも「問いの良さ」を見る

**繰り返しになるが、応募アイデアを評価する際、内容の完成度に目を奪われることが最も危険だ。**むしろ重要なのは、その背後にある「問い」の質だ。「どんな未来が来るべきか?」「それを妨げている構造は何か?」「どこにズレや未解決があるのか?」という問いの鋭さ・深さこそが、構想の骨格となる。

**その問いが社会的に重要であり、構造的に未解決であり、何より“まだ誰も本気で取り組んでいない”のであれば、その問いが導く構想は、必ず未来において大きな意味を持つ。**だからこそ、応募書類の読み込みにおいては、「どんな課題を扱っているか」よりも「どんな問いを立てているか」に目を向けるべきだ。

極端な表現をするならば、本稿で語った「未来の拡張性=グランドデザイン」「グランドデザインに不可欠な5つの視点」「顧客行動、構造変化、未来妄想」「売上のミルフィーユ構造」が描けていなかったとしても、「問いの良さ」からその可能性にワクワクすることができるのであれば、その案は大玉となる可能性を秘めていると評価しても良い。

本当に大きくなる事業は、「今すごい」のではなく「未来に必要とされる問い」を内包している。 それは、技術でも、プロダクトでもなく、“問いの純度”である。問いの純度が高い案は、時間をかけてでも育つ。問いの奥行き、熱量の深さ、構造の見立て──それらを見抜けたとき、ビジコンの「原石」の中にこそ、未来の「事業の核」が光って見えるようになるはずだ。

「プロトタイプの質」より「確信の厚み」を問え

初期段階でのプロトタイプや実証の有無は、それ自体の有無よりも、「なぜそれをやったのか?」「何を確かめようとしたのか?」「そこから何を学んだのか?」が語られているかを見たい。つまり、プロトタイプの精度ではなく、仮説→行動→確信という思考の軌跡を評価するべきなのだ。

確信の厚みが感じられれば、多少スライドが粗くても関係ない。 逆に、プレゼン資料が美しくても、“問いの薄さ”や“仮説の弱さ”が透けて見えるものは、どんなに完成度が高くても大玉には育たない。

ビジコンは「資料コンテスト」ではない。 未来の社会にどんな構造を持ち込むか──その提案の核心に迫れるかが、審査者の目利き力にかかっている。

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