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「越境」の重要性をメンバーや経営層にどう理解してもらうか?

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「越境」の重要性をメンバーや経営層にどう理解してもらうか?

Q. 新規事業に取り組むメンバーに越境経験を促したいのですが、単なる多様な体験で終わらず、本当に意味のある“気づき”を得てもらうにはどうすればいいですか?また、そのような越境の重要性を経営層にどう伝えればいいのでしょうか?

  • ︎ 越境は“他の世界”から自分の構造を捉え直す唯一の手段である
  • ︎ 自分の文脈が壊れる体験が、「問い」と「ビジョン」を生む
  • ︎ 経営層には「事業創出に資するプロセス」として越境の成果を示せ

新規事業の源泉は、“他の世界”にしか存在しない

**新規事業とは、既存事業の延長線ではない“違う回路”から生まれるものだ。**日々の業務や日常的な視野のなかで、どれだけひねってもイノベーションの種は見つからない。なぜなら、日常とは既に最適化された世界であり、その延長線上では「正解らしきもの」に囚われるからだ。

**イノベーションの起点となるのは、「他の世界」だ。**異なる業界、異なる立場、異なる文化──そこに飛び込んだとき、初めて「いま自分が属している構造」の特異性が見えてくる。他者の視点で自分の当たり前を見る。越境とは、自己相対化のプロセスであり、それによってしか“壊せない前提”がある。

つまり、越境とは単なる知識の多様化や経験の広がりではない。 それは「構造的な問いを手に入れる唯一の方法」であり、イノベーションの思考が生まれる起点なのだ。

越境とは、自分の“文脈”を壊す旅である

**越境とは、知らない世界に飛び込み、違う価値観、違う言葉、違う行動様式に出会うことだ。**その瞬間、人は強制的に“自己の前提”に直面させられる。普段なら意識せずやっていた判断が通じない。言葉が通じない。常識が通じない。その“ズレ”に直面したとき、「なぜ自分はそう思ったのか?」という問いが立ち上がる。

**この問いこそが、新しい問いを生む土壌であり、「なぜ私たちはこうするのが当たり前だと思っていたのか?」**という根本的な構造への問い直しが可能になる。そこからしか、非連続な発想や新しいビジョンは生まれない。

越境とは、異文化を知ることではない。 異文化に巻き込まれ、自分が持っていた価値観や判断基準を揺さぶられること。そして、その揺さぶりを経て、自分の思考・行動を“再構築”すること。これが越境の本質である。

越境は“経験の多様化”ではない、“構造の再構成”である

**よく、「異業種交流会に行ってきました」「海外に視察に行きました」といった越境活動が行われるが、それだけでは不十分だ。**越境とは「刺激」ではなく、「文脈の違い」に出会うことだ。つまり、自分の価値観が通用しない状況に立たされ、自分の“当たり前”が壊れるような経験こそが本質だ。

**さらに言えば、越境の目的は情報収集ではない。**知らない世界を“知る”のではなく、“自分の世界を捉え直す”ために他者の文脈に触れるのだ。そうした解体と再構築の繰り返しによって、新規事業を生むに足る思考の筋力がついていく。

越境とは、「異文化に踏み込み、仮説をぶつけ、自分の前提を壊して帰ってくる」という知的運動なのである。

越境とは“問いとビジョン”を生むための思考実験である

**イノベーションを生む人は、常に「自分の思考を疑う」視点を持っている。**そしてそれを可能にするのが越境だ。ムーンショットなビジョンは、日常からは生まれない。井の中の蛙が月の存在を知るには、井戸の外を見上げなければならない。越境とは、その“月”を見つけにいくための知的な旅である。

越境した先では、「なんでこの人たちはこう考えるんだろう?」「なんでこの世界ではこれが常識なんだろう?」という違和感が次々に生まれる。そしてその違和感を、自分の文脈にアナロジーとして持ち帰る。別の業界で常識となっている構造が、自社の業界における問いのヒントになる。

「違う構造を持つ世界」に触れ、「自分たちの構造」を解体する──この視点こそが、新しい事業の問いを生み、未来の当たり前を設計する起点となる。

上層部には“戦略に資する越境”として伝えるべき

とはいえ、越境はしばしば「遊び」に見られてしまう。「俺たちの稼いだ金で外で遊ぶのか」と言われるのも、現場で越境を支援している立場なら耳が痛いほど聞いたはずだ。

**だからこそ、経営層に越境の意義を伝えるには、“遊び”ではなく“戦略に資するプロセス”として語る必要がある。**単に「人材育成のため」「視野を広げるため」といった抽象的な説明ではなく、「越境によって、事業アイデア創出→マーケット仮説構築→事業戦略立案というプロセスがなされた」と明確に伝えるべきだ。

具体的には、越境した先で得られた体験やヒアリング内容を起点に、どんな仮説が立てられたのか。 その仮説がどうピボットされたのか。そして、その越境体験がどのように戦略的意思決定に貢献したのか──これらを“成果としての証拠”として提示する。

越境とは、「見えなかったマーケットを可視化し、ビジョンを描くための投資」であることを、証拠と共に伝えよう。

組織として越境を“仕組み化”せよ

**個人がどれだけ越境しても、それを組織の力に変換できなければ意味がない。**越境とは“習慣”であり、“文化”である。つまり、個人任せではなく、「行動パターン」として定着させる必要がある。

たとえば、「ライトニングトーク制度を導入する」「社外での出会いや学びをSlackで共有するチャンネルをつくる」「プロジェクトチームに社外人材を必ず一人入れる」──こうした越境を“制度として織り込む”ことで、チーム全体に越境思考が波及していく。

越境とは、個人の努力ではなく、組織の設計によって文化となる。 だからこそ、イノベーション文化を根づかせたいなら、まず最初に“越境の仕組み化”から始めるべきなのだ。

越境は“育成”ではない。“戦略”である

**新規事業を担う人材に越境を勧めるとき、多くは「育成」や「学び」の一環として捉えられてしまう。**だが、越境は“育成”ではない。越境とは、新規事業の「問いを見つけるための戦略的アクション」であり、マーケットを知り、自社のポジショニングを見出すための行為である。

**「異なる世界」を知ることで、自社の強みと弱みが相対的に見えてくる。**既存事業の常識が通じない構造を知り、そこに介入できる“新しい当たり前”を描く。その全プロセスが、新規事業における戦略立案であり、越境とはそのための手段なのだ。

越境は、問いを見つけるための“思想”である

**最後に。**越境とは、ただ「動くこと」ではない。それは「問いを生むこと」であり、「自分の世界の外に、まだ見ぬ当たり前がある」という思想そのものだ。

その思想を持ち、習慣化され、組織全体が「問いを見つける文化」に包まれたとき、そこにイノベーションは必ず芽吹く。

越境は、あらゆる問いの原点であり、イノベーション文化の出発点だ。 だからこそ、越境は組織の最初の設計に組み込まれなければならない。新しい事業は、新しい問いからしか始まらないのだから。の熱量でもない。仕組みと習慣と継続。その積み重ねの中でしか、文化はつくられない。

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