Q. 「自分にはやりたいことがない」「情熱が持てない」と感じている人間でも、新規事業を生み出すことは可能でしょうか?
- ︎ スタートアップのように情熱が先行していなくても、新規事業は始められる
- ︎ 情熱は「持っているか」ではなく「動くことで芽生えるもの」
- ︎ 問いが生まれ、愛が芽生え、燃え上がったときに情熱になる
情熱がなくても、新規事業は始められる
**新規事業に携わる人たちの中には、「やりたいことが明確にあるわけじゃない」「自分には熱くなれるテーマがない」と悩む人が少なくない。**だが、その悩みを必要以上に重く捉える必要はない。スタートアップの創業者のように、強い課題意識や原体験を起点にしている人もいるが、それはあくまで“そういう人もいる”というだけの話だ。最初から情熱が燃え上がっていないからといって、事業が生み出せないわけではない。
**多くの大企業の新規事業担当者は、情熱よりも先に「配属されたから」や「ビジネス・コンテストがあるから」といった“状況起点”で挑戦を始めている。**自ら望んで事業開発の世界に飛び込んだわけではなく、半ば偶然のようにチャンスが巡ってきた人たちだ。それでも、そこから本気になり、顧客と出会い、問いを持ち、結果として情熱を手にしていく姿を何度も目にしてきた。
問い→愛→情熱の順番で、火は灯る
**情熱は「最初からあるべきもの」ではない。**それは動き出したあとに、ゆっくりと育っていくものだ。きっかけは、ほんの小さなモヤモヤや違和感でいい。「なぜこうなんだろう?」「どうして誰も気づかないんだろう?」。その問いが芽を出し、誰かと対話することで感情が動き始める。顧客候補と出会い、その声に触れ、その背景にある生活や痛みを想像したとき、人は自然とその人たちのことを「放っておけない」と思うようになる。
**この段階で、すでに火種はできている。**その火を育てていくには、繰り返し顧客と向き合い、学びを深め、自分自身の視点や仮説を磨いていくことが不可欠だ。ただアイデアを出すだけでは、決して火は燃え上がらない。問いが生まれ、愛が芽生え、それが何度も心を揺さぶる原体験へと変わっていったとき、ようやく情熱として結実する。順番は、いつも「問い→愛→情熱」だ。
原体験や情熱が「最初にあるべき」は幻想にすぎない
**「やりたいことがない」と口にする人は、決して能力がないわけではない。**多くの場合、「やりたいことが最初からなければいけない」という“幻想”に縛られているだけだ。世の中には「情熱がある人しか挑戦してはいけない」という空気があり、それが無意識に足を止めさせてしまう。けれどもそれは、挑戦する人を減らすだけの危険な思い込みだ。
**むしろ大切なのは、「何かに心が動いた経験」をどれだけ意識的に探しているかだ。**漫画でも映画でもSNSでも何でもいい。自分とは異なる価値観や体験に触れ続けることで、自分の中に眠っていた問いが目を覚ます。最初から情熱がなくてもいい。だが、情熱と出会うための“越境”を続ける努力は、誰にでもできるし、そこからしか本物の火は育たない。
小さな違和感が、事業のタネになる
**ビジネスの出発点は、壮大なビジョンではなく、ささいな違和感であることが多い。**日常生活の中で「なんでこうなんだろう?」と思ったこと。自分が使っているサービスに対して感じた、ほんの小さなストレス。誰かの困りごとを見て「それって不便すぎるだろ」と感じた瞬間。こうした“モヤモヤ”にこそ、事業のタネが眠っている。
重要なのは、その違和感を放置せず、言葉にして深掘ってみることだ。「何が本質的な問題なのか」「なぜ今まで解決されてこなかったのか」「誰が一番困っているのか」──こうした問いを繰り返しながら、輪郭を掘り起こしていく。すると、徐々に“誰のために、何を変えたいのか”が明確になっていく。それが顧客とつながる瞬間であり、心から「この人のために何かしたい」と思えたとき、火が灯る。
「やりたいこと」はなくていい。一歩踏み出せばいい
**「やりたいことがない」という悩みは、挑戦する資格がないという証ではない。**むしろ、「何かを始めたい」と思っているからこそ出てくる問いだ。その気持ちがあるのならば、最初から情熱を持っている必要なんてまったくない。まずは一歩。情報を集めてみる、人と話してみる、小さなテーマでインタビューしてみる。何でもいい。自分の興味が向いた方向に体を動かしてみることだ。
情熱とは「最初から持っているか」ではなく、「動き続ける中で育つかどうか」だ。 燃え上がる瞬間は、後からやってくる。その日がいつか来ると信じて、とにかく動き続ける。その積み重ねの中で、自分でも気づかなかった想いが形になっていく。やりたいことは、見つけるものではない。自分の中に“生まれてくる”ものなのだ。
THE SEEDS 81
イノベーションの種を撒き散らかす手紙。
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