新規事業 サプリ

自分で欲しいと思えないサービスは、イノベーションではない

自分で欲しいと思えないサービスは、イノベーションではない
  • イノベーションの原点は、他でもない“自分の確信”にある
  • 顧客に憑依し、心が震えるほど「必要だ」と言えるかが鍵
  • 最初の顧客であり、最初の熱狂者は、自分自身でなければならない

本当に自分は「それが欲しい」と思っているか?

イノベーションにおいて、最初の問いはこうだ。 「これは自分にとって、どうしても必要なものか?」。

どれだけ市場調査が整っていようと、どれだけ顧客インタビューを重ねようと、自分の中に“確信”がなければ、それはただの企画止まりだ。

これは「自分がターゲットであるべき」という話ではない。 たとえ自分が顧客にならなくても、その世界に生きる“誰か”を自分の中に憑依させる。想像の中で彼らの感情を代弁し、怒り、叫び、欲する。

そうやって心が震えるほどのリアリティを得た時、ようやく「これは必要だ」と言える。

他人にウケそうなものではない。 「自分が欲しい」と思えるか。あるいは「自分の中の誰かが、涙が出るほど欲しがってる」と言えるか。

それがなければ、プロダクトに魂は宿らない。

顧客を演じるのではなく、憑依せよ

「顧客視点で考えましょう」という言葉が軽く使われすぎている。

問題は、その“視点”がただの表層的な理解にとどまっていることだ。 本当に必要なのは、“感情”への憑依である。

たとえば——

子育て中の母親。 夜中に泣き止まない子どもを抱きながら、「誰か助けて」と心の中で叫んでいる。

シフトに追われる介護士。 利用者の笑顔を見たいのに、時間に追われて心が折れそうになっている。

非正規で働く20代。 将来への不安で眠れない夜を過ごしながら、それでも希望を捨てられずにいる。

彼らの目で世界を見て、耳で音を聞き、心で焦りを感じる。 その瞬間に初めて、「これは本当に意味がある」と感じるサービス像が浮かぶ。

プロダクトは理屈では動かない。 誰かの痛みを感じ取ったとき、それが自分の痛みになる。その共感からくる確信こそが、イノベーションの起点だ。

顧客を”理解する”のではなく、”生きる”こと。 その深さが、企画と革新の分岐点となる。

「自分が買いたくなるか?」を問い続けよ

新規事業の企画会議で、よく「市場がある」「競合が弱い」「技術的に可能」などのロジックが並ぶ。 だが、それだけでは不十分だ。

最も本質的な問いは、「自分が顧客だったら、これは絶対に買いたいと思うか?」 である。

そしてそれに対する答えは、理屈ではなく感覚だ。 背筋がゾクっとするか。心の奥底で「これだ!」と叫びたくなるか。

その確信がなければ、プロダクトはローンチされても風になって消えるだけだ。

サービス設計においては、「自分が惚れ込めるか」が基準であるべきだ。 プロダクトオーナーや事業責任者は、最初の顧客でなければならない。

なぜなら、最初の熱狂がなければ、他人を巻き込むことなどできないからだ。

熱狂のないプロダクトは、死んでいる

イノベーションの現場で最大の罪は、“確信のないまま進めること”だ。

誰も本気で欲しがっていないのに、資料とパワポと意思決定会議だけが進む。 それはもう、企画とは呼べない。

サービスは、つくる人間の感情を映す。 情熱のない人間がつくったサービスは、機能的に優れていても、どこかに“温度のなさ”が滲み出る。

ユーザーはそれを直感的に感じ取る。 「なんか、ピンとこない」と。

逆に言えば、確信を持ってつくられたサービスは、多少不格好でも、人の心を打つ。 たとえニッチでも、熱狂的な支持を得る。

なぜなら、そこには“命”があるからだ。

イノベーターは「情熱の検閲官」を同時に心に宿すべき

イノベーターとは、同時に自分自身の“情熱の検閲官”であるべきだ。

「これは本当に自分の心を動かしているか?」 「単なる流行りに乗っただけじゃないか?」

そう何度も問い直すこと。 企画が整ってきたタイミングほど、自分の情熱を疑う目が必要になる。

「なぜ私はこれを世の中に出したいのか?」

その問いへの答えを、何度でも言語化してみること。 もし、その答えが薄れてきたなら、一度立ち止まるべきだ。

イノベーションの炎は、燃えているうちにこそ、形を持ち始める。 常にこう自分に問いかける。「そのサービス、本当に欲しいか?」。

このシンプルな問いが、最も鋭いプロダクトレビューになる。

イノベーションの原点は、熱狂する自分自身だ

サービスを世に出す前に、まず自分が熱狂しているか。 顧客候補に憑依し、世界を見渡したとき、これは「絶対にあった方がいい」と確信できるか。

それがなければ、世の中に出す意味はない。 それがあるなら、すでにイノベーションは始まっている。

自分が最初の顧客であり、最初の熱狂者であり、最初の変革者である。

イノベーションとは、そういう“私”からしか生まれないのだ。

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