Q. 他社の事業をそのまま真似するのは抵抗があります。オリジナリティがない気がして躊躇してしまいますが、それでも取り組むべきなのでしょうか?
- ︎ 「パクる」こと自体が悪ではなく、進化させる姿勢こそが肝心
- ︎ 競合は仮説検証を先にやってくれた存在と捉えるべき
- ︎ 成功・失敗のエヴィデンスを活かして、独自の勝ち筋を探ることが重要
「パクリ」と「進化」の境界線
多くの人が抱く「パクリ」への抵抗感は、クリエイティブに対する純粋さの裏返しである。「自分のアイデアじゃない」「独創性がない」という罪悪感が胸を締め付ける。しかし、その気持ちこそが、実は最大の足枷になっている。
**オリジナルを生み出すことに価値を置きすぎるあまり、他社の事業を模倣することに後ろめたさを感じる。**しかし、実際の新規事業の現場では「TTP(徹底的にパクる)」は極めて合理的な手法である。なぜなら、すでに市場で試されたモデルは仮説検証がある程度済んでおり、ゼロから試行錯誤するリスクを大幅に軽減できるからだ。
重要なのは「TTPS(徹底的にパクって進化させる)」という姿勢だ。 同じことをやるのではなく、その上で「自分たちだからこそできる付加価値」を積み上げる。進化を前提とした模倣は、むしろ新規事業の成功確率を上げる武器となる。
他社が踏み固めた道を歩きながら、自社ならではの景色を描き出すこと。 このバランス感覚が新規事業創出には求められる。
成功事例の「残された課題」を探す
**競合の成功事例を研究する際、単に「うまくいっているから追随する」のでは不十分だ。**むしろ、その成功の裏側に「まだ解決されていない課題」が必ず存在する。カスタマー・ジャーニーのどこかにある残課題を探そう。
**例えば、月額課金で急成長したあるサービスがある。**表向きは成功に見えても、実際は「3ヶ月で半数が解約」「利用は最初の1週間だけ」という深刻な課題を抱えていた。そのギャップにこそ、次のイノベーションの種が眠っている。
既存プレイヤーに対して顧客が感じている課題に焦点を当て、顧客体験を一段引き上げることができれば、「単なる後追い」から「進化」へと変わる。
徹底的な分析は時間がかかる。 しかし、この「隙間を見つける力」こそ、イノベーターの腕の見せ所である。
失敗の墓場にこそ、宝が眠る
**多くの人は、競合の成功事例ばかりに目を向けがちだが、本当の学びは「屍累々の失敗事例」にある。**彼らは何に躓いたのか? その答えこそが、あなたの成功への最短ルートを教えてくれる。
なぜ彼らは失敗したのか? 資金繰りの問題か、プロダクト・マーケット・フィットの欠如か、それともスケール戦略の誤りか。失敗の理由を解き明かせば、同じ轍を踏むことを避けられる。
歴史的に見ても、失敗の山を築いた市場こそ、次の成功者が現れる土壌となっている。 シェアリングエコノミーやソーシャルゲームの領域でも、最初に挑戦した多くのプレイヤーは消えたが、その失敗の上に巨大企業が生まれた。失敗の蓄積が市場を育てる。その視点を持つことが重要だ。
模倣から始まり、情熱で突き抜ける
**新規事業に必要なのは「理想の未来から逆算する」グランドデザイン思考である。**競合分析はあくまで参考情報にすぎない。大切なのは、「顧客自身が想像できない未来像」を描き、そこへ至る道筋をデザインすることだ。
**したがって、競合を真似ること自体が目的化してはならない。**模倣は単なる手段であり、本質は未来に向けた自分たちのパーパスとビジョンを実現することにある。未来に対する確信があれば、模倣はむしろ強力なジャンプ台となる。
進化のプロセスを仕組みにする
**模倣を進化につなげるには、偶発的な発想に頼ってはいけない。**プロセスを設計する必要がある。たとえば、以下のサイクルを仕組み化することだ。
・競合の「痛い部分」を徹底的に洗い出す
・自社の武器と組み合わせて「これなら勝てる」仮説を作る
・最小限のプロトタイプで顧客の反応を確認する
・予想外の発見を見逃さない
・当初の想定を捨てる勇気を持つ
こうした体系的なプロセスがあれば、単なる「真似」では終わらず、自社ならではの強固な勝ち筋を形成できる。 これはまさに「守破離」の思想にも通じる。まずは型を守り、次に破り、最後に離れて独自のスタイルを確立する。この進化の道筋を歩むことが、新規事業における成功の必然である。
「パクリ」に潜む倫理観と覚悟
**最後に忘れてはならないのは、模倣には常に倫理的なリスクが伴うということだ。**知的財産の侵害や、顧客から「二番煎じ」と見なされるリスクもある。だからこそ、表面的にパクるのではなく、「自分たちは何者で、なぜこの事業をやるのか」という強烈なパーパスを持たなければならない。
パーパスの裏打ちがあるからこそ、模倣は単なるコピーではなく「進化の物語」となる。 「パクるか否か」ではなく「どう進化させるか」を問うのだ。情熱と覚悟をもって取り組む限り、模倣は恥ではない。むしろ未来を切り開くための賢明な一手となる。
そのためには、明日から始められることがある。 気になる競合を3社選び、彼らの「できていないこと」を洗い出してみよう。そこに、あなただけの勝ち筋が見えてくるはずだ。他社が敷いたレールを利用しながら、自分たちの情熱と独自性で未来を描く。そうすれば、パクリは進化へと変わり、事業は確かな勝ち筋を手に入れることができる。
THE SEEDS 81
イノベーションの種を撒き散らかす手紙。
ピンキーが毎週お届けする、新規事業のヒントと思考実験。
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