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技術中心の思考をどう乗り越える?

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技術中心の思考をどう乗り越える?

Q. 技術者として新規事業に関わると、どうしても技術起点で考えてしまいがちです。全体のデザインを考えるうえで、日頃から最も意識すべきことは何でしょうか?

  • ︎ 「何ができるか」ではなく「何に効くか」から始めよ
  • ︎ 技術の価値は“文脈”に宿る
  • ︎ プロダクトアウトの呪縛を超えて、“意味の構造”を設計せよ

「技術的に可能」は、価値にならない

**多くの技術者が陥る落とし穴は、「自分たちの技術がどれだけすごいか」を語りたくなってしまうことだ。**しかし、顧客にとって重要なのは、“技術の素晴らしさ”ではなく、“自分にとって何の意味があるのか”である。

**プロダクトアウトの発想は「できること」から考えるが、顧客起点の発想は、「求められること」から始まる。**この順番を取り違えた瞬間、プロジェクトは独りよがりな方向に進んでいく。

だからこそ、技術者こそまず「誰の、どんな文脈に、どう効くのか」を徹底的に考えなければならない。 技術の“価値”とは、単体では成立せず、“誰かの現実”との関係性の中にしか存在しないのだ。

技術の進化が“罠”になるとき

技術者がよくやってしまうのが、仕様やスペックの追求である。「これだけのことができるようになった」「この処理速度が出せるようになった」と、技術の進歩自体を目的化してしまう。だがそれは、過剰仕様・過剰スペックの落とし穴に直結する。

**たとえば録画機の進化がある。**VHS、DVD、Blu-ray、全局録画、数TBのHDD録画と技術は進化したが、全てを録っている人が、全てを見るだろうか?見ない。むしろ、“何を見るかを選ぶのがしんどい”という新たな課題を生んでいる。

一方でネット配信サービスは、当初は回線も遅く、コンテンツも限られていたが、今ではスマホでオンデマンドに映画が見られるほど進化した。 録画機が追い続けた「高性能」は時代に置き去りにされ、「いつでも見たい時に見たい」という本質的なニーズに寄り添ったサービスが主役になったのだ。

テクノロジーを「意味」に翻訳せよ

**技術には、可能性と呪縛の両面がある。**可能性とは、まだ見ぬ体験を社会にもたらせること。呪縛とは、作り手の「こうあるべき」が押しつけになること。両者の違いを分けるのが、“意味の構造設計”だ。

**技術を価値に変えるには、それがもたらす変化を、誰の人生にどう位置づけるかを言語化できなければならない。**例えば、「自動化できる」ではなく、「煩雑な作業から解放され、自分の時間を取り戻せる」。この“意味づけの翻訳”がなければ、技術は届かない。

そのために必要なのは、ユーザーの感情・日常・欲望にまで降りていく観察力であり、抽象的な技術概念を、生活者の言葉に翻訳する対話力である。 技術は、翻訳されて初めて、人を動かす。

プロダクトから「構造」へと視野を広げる

**技術者の視点は、時に“モノづくり”に閉じてしまう。**だが、新規事業において求められるのは、プロダクト単体ではなく、そのプロダクトが社会にどう組み込まれ、どう機能するかという「構造のデザイン」である。

たとえば、IoT技術を活用して素晴らしいセンサーを作っても、それをどう使うのか、誰がどう導入し、どう活用し、どう課金されるのか──その全体構造が描けていなければ、ビジネスにはならない。

技術者は、“自分たちの作るモノ”だけにフォーカスするのではなく、“価値が届けられる仕組み”全体を構想できる存在であるべきだ。 それは、技術者が“ビジネスデザイナー”に進化するということでもある。

「意味」から構想し、「技術」は最後にくっつける

**真に価値のある事業は、「何が作れるか」からではなく、「何を届けたいか」から始まる。**だからこそ、最初に考えるべきは、“実現可能性”ではなく、“意味の必然性”だ。

意味の必然性とは、技術がなかったとしても、別の方法で実現したくなるほどの「問い」を抱えていること。 そこに共感する人が現れたとき、初めて「その実現手段として技術が使われる」状態になる。

つまり技術は、最後に“答えとして”導入されるべきものであり、“問い”の出発点ではない。 その順番を守れるかどうかが、技術者が価値を生むための最大の分岐点なのだ。

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