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深化と探索、どちらかだけではイノベーション人材になれないのか?

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深化と探索、どちらかだけではイノベーション人材になれないのか?

Q. イノベーション人材を目指していますが、「深化(既存領域の掘り下げ)」と「探索(新領域の模索)」のどちらも経験すべきというのは理解できますが、正直どちらかに集中した方が成果も出る気がしています。また、深化と探索が企業内で分断されている印象もあり、どうキャリアを設計すべきか迷っています。

  • ︎ イノベーション人材に必要なのは“越境”による視点の融合である
  • ︎ 深化と探索の“どちらか”ではなく“行き来する体験”こそが鍵を握る
  • ︎ 分断の打破には「境界を跨ぐ言語能力」と「実践機会」が不可欠

なぜ「深化」と「探索」は分断されてしまうのか?

企業において、深化と探索はしばしば”別物”として扱われがちだ。

**深化は既存ビジネスの効率化・最適化を担う。**探索は未来の可能性を追い求める。

この分断こそが、イノベーション人材の成長を阻む構造的な壁となっている。

深化に偏れば、「現場はこうだから」と制約条件に縛られた発想に陥りやすい。

一方で、探索に偏れば、「それって本当に実現可能なの?」という問いへの感度が鈍くなる。

どちらにも片足を置けなければ、理想論と現実論の間を往復する思考ができない。

したがって、「どちらかに集中すれば良い」という選択肢は、イノベーションという山を登るうえで、片手に登山具しか持たず挑むようなものだ。

理想の未来に登りきるには、両方のツールを持ち、行き来する感覚を養う必要がある。

“視座の往復運動”のために、両者を経験する

深化と探索の両方を経験することが推奨されるのは、単なるスキルセットの話ではない。

本質は「視座の往復運動」にある。

たとえば、探索的プロジェクトで未来の可能性を描いた後、現場に戻って“その可能性を現実に接続させるための条件”を洗い出す。

この過程で、思考の柔軟性と構造化能力が同時に鍛えられていく。

これは、アート思考とデザイン思考の往復にも似ている。

直感から発想する(探索)、構造で実装する(深化)、この反復によって、「妄想を現実にする人」になれる。

「現場で磨かれた目」と「未来を妄想する脳」の両方が必要。 どちらかでは、必ず限界が来る。

イノベーションは、”片方の正しさ”ではなく、”両方の正しさの統合”によって生まれる。

「融合人材」になるために必要な3つのアクション

**では、どうすれば深化と探索の両方を経験できるのか。**実践的に言えば、以下の3つのアクションが効果的だ。

1. プロジェクト単位で“探索フェーズ”を自ら作る

既存事業内でも、「将来のユーザー行動を妄想する」「技術の未活用リストを棚卸しする」などの探索行為は可能である。

**仮説ベースでもいい。**まずは余白を見つけて“探索視点”を持ち込むことが大切だ。

2. 社内越境を仕掛ける(部門横断の巻き込み)

**マーケティングからR&D、営業から経営企画へ。**横断的に会話を仕掛けることで、“視座の切り替え”が起きる。

分断を越えるには、まず自分自身が“分断を跨ぐ行動”をとるしかない。

3. ダブルキャリア的な“副業・社外経験”を活用する

**会社の枠を超えた探索機会を得よう。**ディスカッション、ワークショップ、メンタリング、スタートアップ参画など。

「枠の外で培った未来視点 × 枠の中で磨かれた実装力」という掛け算が可能になる。

探索人材・深化人材の“ケミストリー”を設計せよ

多くの企業が見落としているのが、「深化と探索は別人材に任せればいい」という誤解だ。

**確かに、得意領域の違いとしての役割分担は必要だ。**しかし、それが“分断”になってしまっては意味がない。

理想は、「探索人材と深化人材の間に、橋渡し役がいる状態」だ。 あるいは、少数でも“両方の言語を話せる融合人材”を育てること。

この「ビジネスプロデュース力」をもった人材のいるか否かが、組織としてのイノベーションの成功に大きく寄与する。

イノベーションの現場では、個別最適なロジックと、全体最適なビジョンを同時に動かす必要がある。

企業としては、人材開発の仕組みとして「探索→深化」「深化→探索」への越境ルートを設計すること。

個人としては、「自分の得意を起点に、反対側を取り込む思考訓練」を続けること。

この両輪が不可欠だ。

分断を超えるカギは「言語化」と「共通のビジョン」

最後に強調したいのは、探索と深化をつなぐ唯一の共通言語は”ビジョン”だということである。

探索型の人材は「こんな未来を創りたい」と語る。

深化型の人材は「どうやって実現可能にするか」を設計する。

ビジョンが明確であればあるほど、両者は”対立”ではなく”役割の違い”に変わる。

そのビジョンを、ストーリーとして言語化する力があれば、越境も分断も乗り越えられる。

あなた自身がその言語を操れるようになれば、深化と探索を統合できる”イノベーション人材”に近づいていくはずだ。

だからこそ――

深化だけでは未来は描けない。 探索だけでは現実は動かせない。

その往復運動が、「世界を変える力」になるのだ。

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