Q. サウンディングの場で本題に入る際、アイスブレイクからどのように背景や主旨を伝えるべきか悩みます。アイデアの主旨(肝)をどこまで語るべきでしょうか。どう整理し、どう臨むか、コツを教えてください。
- ︎ サウンディングは「共創の場」であり、「説得の場」ではない
- ︎ 本質は“問いの共有“と”視座の接続“にある
- ︎ 話す量よりも、「何を一緒に探るか」を明確にすることがカギ
サウンディングは“共創の場“と捉える
**サウンディングは「情報を聞き出す場」ではなく、「問いを共にする場」である。**この視点の転換ができるかどうかが、インタビューイーから聞き出せる情報の精度を大きく左右する。
**多くの人が陥る罠は、相手を単なる「情報提供者(データソース)」として見てしまうことだ。**しかし、真に価値あるサウンディングとは、相手を「未来を共につくるパートナー候補」として遇するところから始まる。
だからこそ、こちらが全容を話して“承認“を得ようとする必要はない。 むしろ、完璧なプレゼンは相手の思考を停止させる。「すごいですね」で終わらせてはいけないのだ。目的は、「一緒に考えるに足る問い」を提示できるかにある。未完成であることを恐れず、むしろその“余白”こそが、相手の知恵を引き出す鍵になると心得よう。
そのために大切なのは、“話すこと“より“問うこと“だ。 冒頭で背景や主旨を説明する際も、「なぜこれを探っているか」という熱源(Why)を話すだけでよい。アイデアの詳細な機能やスペックは、その共創的な空気が醸成されてからでも遅くはない。まず共有すべきは、機能ではなく、その事業が目指す世界観や未来の社会像、そして解決しようとしている痛みの深さだ。
実際、ボクがサウンディングする際は、「こんな未来、あったらいいと思いませんか?」 あるいは「この現状、おかしいと思いませんか?」といったことから語り始める。プロダクトの話は必ず後半に回す。アイデアを「売る」のではなく、「一緒に見極めてほしい」というスタンスを貫くことで、相手の本音を引き出す土壌が育つからだ。
##“アイスブレイク“は関係構築の“種まき”
アイスブレイクとは、単なる場の温めではない。“人と人の摩擦係数“を下げるための戦略的な儀式である。天気の話や最近のニュースで場を濁してはいけない。ユーモアや雑談に終始せず「あなたと話したい理由」を丁寧に伝えることが最も効果的だ。なぜなら、それこそが相手の承認欲求を満たし、当事者意識に火をつけるからだ。
**それは相手のモチベーションを喚起する“意味づけ“でもある。**数あるインタビュイーの中で、数ある専門家の中で、なぜあなたなのか。この問いに対する答えを用意せずに臨むのは、礼儀を欠くと同時に、機会損失でもある。「なぜこのテーマを考えているか」「なぜ今あなたに相談したいか」をストレートに語る。情熱は、論理を超えて伝播する。
たとえば「このテーマで議論する中で、御社の○○という取り組みが強く印象に残っておりまして……」といった一言だけでもいい。 あるいは「あなたの書かれたアンケートの、この一行に衝撃を受けたのです」でもいい。その一言で場の空気はグッと和らぎ、相手は「単なるインタビュー対象」から「選ばれた対話者」へと変わる。
人は「目的」よりも「意図」に動かされる生き物だ。 だからこそ、「この時間にどんな意味があるのか」を共に合意できる状態を、アイスブレイクのゴールとしよう。単なる時間消費ではなく、互いにとっての知的生産の時間にする。その握りができれば、その後の対話の質は劇的に高まる。
##どこまで“話す“か?ではなく、何を“問う“か?
**よくある誤解は、「主旨を話す=全部話す」となってしまうことだ。**真面目な人ほど、背景から現状、課題、解決策までを網羅的に説明しようとする。だが、情報量が多すぎると、インタビューイーは「聞く」モードに入ってしまう。実際には、“なぜこの話をしているのか“という核心さえ伝われば、詳細までは必要ないのだ。
**話すべきは「社会や顧客の違和感」であり、「自分なりに考えている仮説」の2点に絞られる。**これを提示したうえで「これって実感ありますか?」「現場ではどう見えてますか?」と問いを重ねていく。相手の脳内に検索ワードを投げ込むイメージだ。そうすることで、一方的な説明ではなく、双方向の探索が始まる。
たとえば、ボクがよく使う型はこうだ。
① 今こんな未来を描いています(理想像)
② でも、現実はこうなっていてギャップがあります(課題意識)
③ このギャップに挑みたいと思ってます(仮説・試行)
④ この話、どう受け止められますか?(共創の扉)
この構成で語れば、インタビューイーの思考も自然と“問い“の回路に入る。 「なるほど、確かにその課題はあるね。でも、現場ではもっとドロドロしていて……」といった具合に、生々しい一次情報が引き出せれば勝ちだ。大事なのは「正しさ」を証明することではなく、「一緒に深めたくなる問いかどうか」だ。
##“語る“より“描く“のがポイント
**抽象的なテーマほど、言葉を尽くしてはいけない。**言葉は解釈のズレを生む。代わりに、1枚の絵や図を持ち込むだけで、理解と納得のスピードが段違いに上がる。人間は視覚情報の処理能力の方が圧倒的に高い。だからこそ、未完成でもいいのでビジュアルを用意しよう。文字情報の少ないチラシなどに落とし込むことを推奨する。
**ボクは、チラシに「現在→理想→ギャップ」の3点を描いて、対話のベースにすることが多い。**ホワイトボードがあれば、その場で書き殴ってもいい。そうすると、議論が“点(言葉のやりとり)”から“線(構造の共有)”に変わる。共通の地図を持つことで、初めて「道」の話ができるようになる。
図があることで、“どこがピンと来ないか“が明確になる。 「この矢印のつながりが、現場感覚とは違うんだよね」といったフィードバックが得られれば、それこそがインサイトの可能性が高い。議論の焦点が合い、互いに指を差しながら話せるようになれば、共創の場として機能し始めている証拠だ。
口頭ではぼやける主張も「図解+問い」で示せば、相手の解像度が一気に上がる。 綺麗な資料である必要はない。むしろ手書きのようなラフさがある方が「ここ修正してもいいですか?」と相手が入り込みやすくなる。話す内容よりも“見せる構造“を準備することが、最大のアイスブレイクとなるのだ。
##サウンディングの「成功」は“気づきの交換“で測れ
サウンディングの成否を「有用な情報が取れたか」だけで判断しないでほしい。「期待通りの答えが返ってきたか」を正解にしてしまうとそれは単なる確認作業に成り下がる。真面目なサラリーマンは、事前に用意した回答に対して、一問一答のインタビューをしてしまう。それではイノベーションの種は見つからない。
むしろ「相手の考え方の深層が見えたか」「こちらの問いが再定義されたか」のほうが、よほど重要な指標になる。 想定外の視点、耳の痛い指摘、全く異なる文脈からの示唆。これらが得られた時こそ、あなたの事業は一段階進化する。
「今日の対話で、自分の仮説はどう変わったか?」 「相手の中に、どんな“気づきの兆し“が生まれたか?」
サウンディングの後に、相手にとっても「新しい視点を得られた」「思考が整理された」と感じてもらえれば、その関係は続いていく。 その関係性が続くことが、サウンディングの成功そのものだ。
問いが深まり、関係性が生まれたなら、次のステップが自然と見えてくる。 情報を「狩る」のではなく、知恵を「耕す」。その姿勢で臨めば、サウンディングはもっと自由で、創造的な時間になるはずだ。
THE SEEDS 81
イノベーションの種を撒き散らかす手紙。
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