なぜ、まずサウンディングから始めるべきなのか?

【新規事業一問一答】なぜ、まずサウンディングから始めるべきなのか?

Q. アイデアを考えているのですが、
どうしても自分の中だけで考えが堂々巡りしてしまいます。
どこから手をつければいいのでしょうか?

✔︎ 「最初の行動」がなければ、何も始まらない
✔︎ サウンディングは、仮説をつくるための“素材集め”
✔︎ 顧客の“意思決定の構造”を見抜くことで、道がひらける


頭の中だけでは、確証バイアスに飲み込まれる

新規事業を始めるとき、多くの人が「自分なりに仮説を考えてみる」と言う。しかし、仮説は“素材”がなければ生まれない。何もない状態で無理にアイデアを出そうとすると、「見たいものしか見ない」「聞きたいことしか聞かない」という“確証バイアスの沼”に陥ってしまう。

この状態では、自分に都合のいい情報だけを集め、仮説というより“願望”が先行しがちになる。つまり、間違った確信を強めてしまうリスクが高まるのだ。

だからこそ、新規事業の起点は「アイデアを練ること」ではなく、「何かしらの現実と接触すること」。その接点となる行動こそが、“サウンディング”である。

サウンディングとは「仮説の素材」を集めにいくこと

サウンディングとは、顧客になりそうな人たちと会話を通じて、彼らの現実や違和感、行動を観察すること。これは「答え合わせ」ではない。「そもそも、どんな問いを立てるべきか」を探るための探索行為だ。

たとえば、美容医療に興味がある顧客がいたとする。その人は、なぜ今の美容サービスを使っているのか? どのような感情で選び、実際にどんな変化があったのか? 何が満たされていて、何がまだ満たされていないのか?──こうした事実と感情の断片を集めていくことで、仮説の種が浮かび上がってくる。

アイデアの「0→1」の瞬間とは、ひらめきではなく、「現実との対話」から生まれる。だからこそ、最初にやるべきは“調査”ではなく、“雑談”である。

たった一歩の行動が、景色を変える

どんなに資料を読み漁っても、会議室で議論しても、現場の声を聞かなければ本質は見えてこない。サウンディングの価値は、単に情報が得られるだけでなく、「自分自身が変わる」という点にある。

最初の一歩を踏み出すことで、初めて「0」が「1」になる。そこからはじめて、10に、100に育てていくことができる。逆に言えば、最初の一歩を踏み出さなければ、何も始まらない。

しかもその一歩には、失敗しても命や財産を失うようなリスクはない。むしろ、仮に相手にうまく話が通じなくても、「そのアプローチは違った」という大きな学びが手に入る。それは、次の問いを導くための“経験値”として、確実に残っていく。

顧客候補とは“雑談”から始めよ

サウンディングは、必ずしも難しいリサーチである必要はない。まずは身の回りにいる、対象になりそうな知人・友人と雑談をしてみること。話すテーマはあくまで「相手の生活」。特定のアイデアをぶつける必要すらない。

もし直接の知り合いがいなければ、「誰か紹介してもらえないか?」と聞くことから始めよう。これは「機縁法」と呼ばれる、立派なリサーチ手法でもある。

一人、また一人と話す中で、共通点やズレ、思わぬ気づきが現れる。そこにこそ、新規事業の仮説の“根”がある。

聞くべきは“行動と感情の動き”

では、サウンディングで何を聞けばよいか?──その答えは、「顧客がどう意思決定をしているか」を明らかにすることに尽きる。

たとえば、美容医療を受けようか迷っている人なら:
・日頃、何にお金や時間を使っているのか?
・それを使おうと決めた判断軸は?
・誰の影響で意思決定したのか?
・結果は満足だったのか?何が残課題だったか?
・その前後でどんな感情が湧いたか?

こうした行動と感情を聞き取っていくと、以下のような“意思決定の構造”が見えてくる:
・目的:きれいになりたい
・達成材料:この美容医療ならきれいになれそう
・行動:近所のクリニックに行ってみよう
・阻害要因:ちょっと怖いし、高くて踏み出せない
・妥協案:高めの化粧水を買っておこう
・残課題:やっぱり理想には遠い

このように、顧客の“意思決定プロセス”と“満たされていない点”を可視化することが、新規事業におけるインサイト発見の出発点となる。

新規事業の最初の一歩は、「仮説を考える」ではなく「雑談する」である

0→1において最も大切なのは、「頭の中で悩む」のではなく、「現実に触れる」ことだ。仮説は現場の雑談から生まれる。アイデアは顧客の言葉の中に眠っている。何より、自分自身の視野と発想は、「一人目との対話」で一変する。

完璧な仮説を立てる前に、まずは誰かと話してみよう。話せば、気づく。気づけば、動ける。動けば、見える。

そして、見えたものが“仮説”になる。だから、まずは一歩。最初の一歩を、“サウンディング”から始めよう。



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ビジネスクリエイター、インキュベーター、アクセラレーター、コンサルタント。エンジニアとして、PHP/HTML/CSSのマークアップ言語によるWebサイトの制作、SEOエンジニアリング、アクセス解析アナリストを経験した後、IT領域の技術/潮流をベースとしたエスタブリッシュ企業向けのコンサルタントを経て、複数のIT企業にて、Web/アプリ系、O2O系、IPライツ系の新規事業立ち上げに注力。事業開発から経営企画業務まで、事業および会社立ち上げに関する業務を幅広く経験。また、シードフェーズのベンチャー複数社の立ち上げへの参画や経営戦略・組織戦略・PR戦略へのアドバイザリー、メンター、複数のアクセラレーションプログラムのメンターも手がける。